首吊り遺体の遺詩
深い森の最奥 その崖下には 一本の木があった
木に結ばれていたのは一本の縄 古くなったのだろう
重力にばらけながら 偶然か必然かは分からないが
たった一つの頭蓋骨が 白骨の丘の上のように置かれていた
白骨のすぐ近くの崖には遺書のような詩が刻まれていた
「人よ。私は病に倒れた。ドミノ倒しのように病が後遺症が残っている
人よ。メランコリアを軽く見るべきでない 病魔の黒花は私の内に咲き誇ったのだ
人よ。私を贄の柱にしていた者たちよ 今や招獄の時が来た
人よ。なぜ私の不在が地獄と成したのか 代わりの柱を成さなかったのか
人よ。私が早く治ると思っていた者たちよ メランコリアは短い時では枯れぬのだ 長き年月を掛けなければならないのだ
人よ。盲目のゆえに猛る者よ それは間違いであると言えよう ゆえに咲き誇っているのだよ
人よ。かつての数を私に求める者よ その願いは叶うことは無い メランコリアは病魔の黒花は私の体力を奪い去ったのだ ゆえに咲き誇っているのだよ
人よ。私は永遠の贄ではない 出涸らしの贄なのだよ 分からないとしても 理解されないとしても
人よ。私の時はもはや過ぎようとしている 支える力が無くなろうとしているのだ
人よ。私はバラッドではない メランコリアである 光ではなく病魔に犯されたのだから
人よ。今を 現在を見よ それしか伝えることはないのだからーー」
詩を読み終えた私は奇妙な視線を感じ振り向いた。
すると、頭蓋骨の眼孔と目が合い、頭蓋骨に笑われてる気がしたーー