表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/19

第2話「戦力は一人でも多い方がいい?」

「それは、戦うなってこと?」

「そうです。迷っている人を戦いに引きずり込むほど、こっちは困ってない」

「自分の手で、世界を救いたいって願うのは純粋な願い……」


 唇をぎゅっと結んで、トレアは自分の中での決意を固める。

 自ら戦いの世界に身を置かない人たちばかりだけど、彼女のように自分の手で世界を救いたいと願うっている人もいるんだってことが伝わってくる。


「それは願いじゃなくて、プレッシャーだ」


 それなのにこんなことを言うなんて、説得力がなさすぎて格好もつけられない。

 でも、魔法少女が守るべき世界の住民には、理不尽な世界で傷ついてほしくない。


「リョウ様は、リョウ様に負担を背負わせること……何も思わないの……?」


 守りたい人がいるなら、その人を守るための最善を選んでほしい。

 好きな人がいなくても、自分を守るための最善を選んでほしい。

 綺麗事な考え、上等。


「戦力は一人でも多い方がいいでしょ? 世界を救いたいなら、俺は魔法を使うことを選ばなきゃ……」

「魔法協会って、結構、圧力が厳しそうな機関だな」


 俺が無理矢理に言葉を挟むと、トレアはようやく言葉を止めて落ち着いてくれた。


「俺とヒナは望んで、戦うことを選びました」

「一応は……理解しているつもり」

「俺たちには、一般人を守るという使命があります。まだ戦うことを選択していない人間が、そんなに思い詰めんな」


 トレアが視線を下に向け、ゆっくりと深い溜め息を吐いた。


「圧力の強い魔法協会かもしれないけど」


 なるべくトレアが思い詰めないように、俺は先輩のような柔らかな笑みを浮かべられるように努めた。


「……申し訳ございませんでした」

「何も悪くないんだから、そこまで深く謝罪すんな」


 誠意を見せてくれているトレアに対して失礼だとは思ったけど、魔法少女好きとして闇落ち展開だけは迎えさせない。

 いつだって魔法少女には、綺麗な夢を見続けてほしいと思ってるから。


「これから魔法協会を代表して……今後も全力でサポート、させていただきます……」

「ありがとう。凄く助かる」


 全力、なんてプレッシャーみたいな言葉を背負わなくていい。

 でも、これはトレアの決意でもあるだろうから、これ以上は言葉を返さなかった。


(俺は巻き込まれてもいいけど、ほかの一般人はこういう特殊な事件に巻き込んではいけない……)


 真の主人公(先輩)を支えるって決めたなら、俺も俺なりに誰を守らなければいけないのかを理解しなければいけない。

 トレアの仕事に対する真摯な姿勢から、学ばせてもらう。


「お昼の休憩時間に、失礼致しました」


 トレアは座っていた木製の丸椅子から立ち上がり、綺麗なお辞儀を残して去って行った。

 最後まで真面目なところは自分そっくりと思いながらトレアを見ていたら、彼女が出て行く際に人影を発見。出入り口の扉付近に、先輩がいるのを見つけてしまった。


(今の会話、聞かれてたかな)


 先輩に聞かれて、気まずくなるような会話は一切していない。

 だけど、他人を見捨てたくないというトレアの生き方が先輩の目にどう映ったか。


(先輩は、俺が巻き込んだようなものだから……)


 闇落ちって、物語を盛り上げるための手段ではあると思う。

 でも、現実で先輩が闇落ちするなんて展開が待っているとしたら、ただただ心が痛くなってくる。


(先輩は絶対、闇落ちさせない)


 俺が先輩を巻き込んだ、異世界転生だから。

 先輩の人生の責任は、俺が取ってみせる!

 そんな決意を元に、俺は先輩を部屋の中に招き入れようと席を立ちあがった。


「リョウせんせっ! お疲れ様でした~」

「また、明日ね。リョウちゃんせんせっ」


 先輩が部屋に入るとき、廊下が賑やかな雰囲気に包まれているってことに気づいた。

 平和を象徴するために、行き交う生徒たちが廊下に出る際に俺へと声をかけてくる。


「ちゃんと復習しろよ」

「はいはーい」

「レポート遅れまーす」

「どさくさに紛れて、とんでもない発言、投げ込んでくんな!」


 世界は、平和そのもの。

 自分たちが住む世界を救う気があるんだかないんだか、よく分からない生徒と教師で構成されている魔法学園。

 それでも教師という役職が与えられている以上は、教師マニュアルに従って授業を展開する日々。


「ね、また最下位の子、先生の手伝いさせられてる。可哀想」

「可哀想って思うなら、手伝ってくれると助かるんですが」

「っ」


 授業で使った資料を運んできてくれた先輩。

 一緒に資料を片付けようと扉を閉めようとすると、わざと聞こえるように嫌味を言ってくる同学年の生徒。

 そこまで堂々と人をいじめることができるなら、その人を蔑むための力を世界の救済に使ってくれと思わなくもない。


(でも、世界を救う救わないなんて、人の自由)


 国から強制されて、愛を喰らう化け物と戦いなさいという設定の学校ではない。

 ここは、自分たちの意志で入学を決めることができるのが魔法学園。


(なんのために魔法を学んでるんだろ)


 生徒たちの目的も分からなければ、教師たちの目的も分からない。

 それでも俺は魔法学園の教師で、先輩は魔法学園の生徒という設定。

 そんな役職、役割の中で、俺たちは異世界を救っていかなければいけない。


(俺たちがいなくなったら、俺たちが亡くなったら、この世界は滅びる……)


 この世界が滅びても、俺も先輩もまだ異世界に対して深い思い入れはない。

 勝手に滅びてしまえとは思うけど、女神様が時の進みを遅くしなければいけないほど鬼気迫った異世界であることを聞かされた。

 他人事のはずだけど、他人事とは思えなくなっているあたり立派な異世界人に染まりつつあるのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ