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第1話「報酬?  魔法教会?」

「予習と復習の優先順位をつけろよー」


 学園の鐘が鳴り響くと、講義室で授業を受けていた生徒たちは一斉に肩の力を抜いていく。

 そして各々の昼休みを過ごすために、廊下と講義室を繋ぐ開かれた扉に歩を進めていく。


「リョウ様っ」


 魔法学園の教師を務める俺は講義室に居残って、とある女性の応対をする。


「これは、報酬ね。世界を救ってもらったお礼的な……」

「……凄く複雑です」


 事件が片づくと、魔法協会って機関から一人の女性が俺の元へと挨拶に来た。

 名前はトレア・シャゼ。

 やっと異世界っぽい名前の人と遭遇したことで、少しずつ異世界転生をしたんだって自覚が芽生えていく。


「リョウ様は教職員の身分だから、給料が入るから生活に苦労はないわね。でも、ヒナ様は魔法学園の生徒だから。お金がないと、何かと不便よね」


 彼女の金色の髪は、まるで太陽の光が織り込まれたかのように輝いていた。

 言葉を発するたびに軽やかに跳ねるツインテールは、異世界感ある金色の華やかさを訴えかけてくる。


「ところで……」


 前世で見かけたアニメやラノベに出てくるような世界に巻き込まれて以来、尋ねてみたいことは山のようにあった。

 だけど、それらの質問は何一つ片づけられることなく日々が過ぎていく。


(当然と言われれば当然だけど……)


 だって俺と先輩は異世界転生者であって、異世界転生者を助けてくれる存在は目の前にいるトレアくらいしか出会ったことがないのだから。


「リョウ様、深刻そうね」

「世界を救うと、お金がもらえるなんて……その、思ってもなかったからな……」

「魔法協会も魔法協会で、まさか魔法学園の教師と生徒が戦いに参加してくれるとは思ってもいなかったわ」


 報酬?

 魔法教会?

 今まで暮らしてきた世界とは無縁な言葉の数々。

 ひとつひとつ尋ねていけば、トレアは必ず答えをくれるはず。

 それなのに、尋ねる勇気が涌いてこないのは俺が愛を喰らう化け物に関わることを怖がっている以外の何物でもない。


「こちらとしては、感謝してもしきれないくらいよ。そんな心境だから、遠慮なく受け取ってちょうだい」


 淡々とした口調で喋り続けるトレアの話を聞いていると、事態は深刻と言わんばかりの雰囲気に包まれていく。

 けれど、命を狙ってくるわけでもない敵を前にして、何をそんなに怯える必要があるって思うこともある。


(でも、化け物に対して、俺と先輩が恐怖を抱いたのも事実……)


 だったら、この世界を生きてきた人たちは、俺たち以上の恐怖を抱えているってことかもしれない。


「ヒナ様は入学時の成績が最下位だったけど、やっぱりリョウ様が認めるような才能を秘めていたってこと?」


 いえ、先輩は俺が勝手に異世界での魔法少女育成計画に巻き込まれただけです。

 トレアの言葉に心でツッコミを入れてみると、深刻な空気はどこへやらって感じになってきた。


「ああ、まあ……彼女は、本当に凄い人材だよ」


 トレアに対して、先輩が弱キャラであることを伏せる必要はないかもしれない。

 でも、念には念を入れよという言葉に従う。

 先輩が弱キャラで笑いものにされてしまう事態を避けるためにも、俺は教員らしく丁寧な喋り方で先輩のことを褒めちぎってみた。


「リョウ様が授ける強大な力は、ヒナ様にしか授けることができないってことかぁ」


 いえ、先輩以外の戦力も募集中です。

 できることなら、魔法少女候補になるような人材だと嬉しいです。

 心の中の、トレアへのツッコミが止まらなくなってくる。


「適性を見て……という感じだな」


 俺はトレアとの会話に楽しみを見出せるようになってきたけれど、彼女自身は至って真剣。


「私も魔法協会職員として、このままではいけないわね」


 トレアのおかげで恐怖心が薄れていったことに感謝をしつつ、前世でほとんど友達を作らなかった俺は彼女との会話をどう終わらせたらいいのか分からない。


(トレアみたいに真面目すぎると、自分を追い込みすぎるんだよなー……)


 自分を追い込んだところで、それはそれで問題ない。

 一緒に乗り越えるべき課題があってこそ、俺が理想とする魔法少女の物語というものになるとは思う。


「結果的に助かった、では駄目だから」


 でも、トレアが魔法少女を志願してくれた場合、きっと彼女は魔法少女の中でも最年長になる。

 最年長だから、しっかりしなければいけない。

 そんな感情が、トレアの闇落ちのきっかけになってはいけない。


「戦いは、強制されるべきものじゃない」

「え?」


 トレアはぼんやりとした目つきで、何を言っているか訳が分からないような表情を浮かべていた。


「国民に、夢と希望を与える存在になってほしい」


 魔法少女は、夢と希望を与える存在。

 常に前を向いていろとは言わない。

 自分の身に何かが起きたとき、周囲を頼ることを選択肢に加えてほしい。

 何かあったとき、誰かを頼れるような環境をマスコットキャラクターとしては整えていきたいと思っている。


「子どもみたいな発想だって思ったら、適当にあしらってくれて構わない」

「リョウ様? あの……」

「魔法少女って、特別なものなんだよ」

「魔法、少女……?」


 トレアが魔法協会だかなんだかに怒られるようなことがあったら、俺も一緒に謝る。

 トレアだけに、責任を負わせることはしない。

 トレアが魔法少女になるかどうかは置いておいて、彼女の中に|マスコットキャラクター《俺》っていう選択肢を加えておきたい。

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