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第27話 (2/3)

 

 彼らは待ち続けた。しかし、浅野先生は現れなかった。誰一人として、診療所へ入ってくる者はいなかった。

 ついにリサレは立ち上がり、営業時間を確認するために外へ出ることを決めた。

 しかし、戻ってきた彼女の表情は暗かった。

「……外に貼り紙があったわ。『診療所は当面の間、休業いたします』って。」

「何ですって?」園香は信じられないというように叫んだ。

「でも昨日はそんなもの、なかったはずよ!もしあったら、気づいていたはず!」

「どうする?」リサレはフレームに視線を向ける。しかし、彼は答えなかった。

 ドサッ――

 園香はその場に膝をついた。「……ごめんなさい……」

 ~バンッ! バンッ! バンッ!~

 彼女は拳で床板を激しく叩いた。

「昨日まで……ここにいたのに……!」

 リサレは、ようやく事態の重大さを理解し始めた。

 目を大きく見開き、フレームの顔を見つめる。

 フレームは力なく笑い、静かに言った。「……いいんだ。試してくれて、ありがとう。」

「よくないわよ!地上へ戻って、もう一度――!」

「……いや。」彼は彼女の言葉を遮った。「……もう、いい。俺は……家に帰りたい。」

「でも……」リサレの喉が詰まり、涙が込み上げる。

 彼を失いたくない。

 この希望を、失いたくない。

「今、死ぬなんて……そんなの、ダメよ……!」

「秘密の庭は燃え尽きた。それに、フレームが猟師だとしても……パブロンの許可なしに隔離ゲートを開くことはできない。」園香が小さく呟く。「それに、仮に外に出られたとしても……私たちが薬を手にするまでに、何時間もかかる……」

「そんなの関係ない!方法を見つければいいだけでしょう!」リサレは叫んだ。「ここで諦めるなんて、ありえない!病に苦しんでる人たちは?私たちは彼らを助けるんじゃなかったの?あんたたちの正義は、どこへ行ったのよ?!」

 フレームは答えなかった。

 ただ、腕をまくり上げた。

 そして――

 じっと、自分の腕に広がる病の進行を見つめた。

 銀の糸が、ほぼ腕全体を覆い尽くしていた。

 彼はそれを眺めながら、静かに言った。「今ここを出たとしても、地上でお前たちを守ることはできない。どんな方法を取ったとしてもな。」彼は、目を伏せる。「……お前たちに、何かあっては困る。……すまない。」

 ――リサレは、もう耐えられなかった。

「……っ!」

 彼女は拳を握りしめ、そのまま診療所を飛び出した。


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