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第27話 (1/3)

 

「文字通りの意味よ。あのドラゴンは、私たちに直接話しかけてきたの。オミオにも聞こえていた。それに、妖精たちも異常なくらいうるさかった。まるで、常に耐えられないほどの高音で叫び続けているみたいだった。」

 リサレは腕を組んだ。「そんなの、現実味がないわ。モンスターは喋ることも叫ぶこともできない。アドレナリンで錯覚を起こしたんじゃない?」

 その言葉に、フレームの眉間が僅かに寄る。

 ――秘密の庭園での出来事を、彼はまだ忘れていなかった。

「……お前、イエティと話してなかったか?」

「モンスターに声がないからって、意思疎通ができないとは限らないわ。」 園香がすかさず口を挟んだ。「あの氷のドラゴンは、極めて知能が高かった。それこそ、私を騙して、わざと隔離ゲートを突破したくらいにね。でも……」彼女は膝の布を、ぎゅっと握りしめた。

「……それはお前のせいじゃない。」フレームが言葉を返す。「たとえお前がいなかったとしても、あいつは別の手を使って突破していただろう。」彼の脳裏に、アトラスが見せたあの怒りがよぎる。「それだけは、間違いない。」

 園香は、フレームをじっと見つめた。「どうやって、あのドラゴンを従わせたの?」

 フレームは少し間を置いた。「……倒した。」彼はリサレの方へ目をやる。「だが、リサレがいなければ、不可能だった。」

「リサレっていうのね。いい名前。」

「ありがとう。」だが、そう言った彼女の表情は、どこか不機嫌そうだった。「で、これからどうするつもり?フレームを治療した後、お前はどう動く気?」

「浅野先生は、自分が何を配っているのか知らずに治療薬を患者に渡している。だから、大きな騒ぎにはならないはず。それなら、彼の持っている花を少しもらって、他の診療所にも分けるのがいいと思う。」園香はそう言って、一度言葉を切った。「その後、もう一度シャトーの図書館へ行くつもり。両親やスタージスたちが、どうして治療薬のことを隠しているのか知りたい。そして――」彼女の瞳が僅かに揺れる。「……なぜ、あの氷のドラゴンが話すことができたのか。その理由を知りたい。それが頭から離れないの。おそらく……魔法が関係しているんじゃないかと思う。」

「魔法?」フレームが繰り返した。

「そうとしか考えられないわ。あれほどの言語能力、普通のモンスターにあるはずがない。」

「でも、お前が聞こえたのはあのドラゴンだけだったんだな?」フレームが確認する。「それと、妖精たちの叫び声。でも、他のモンスターの声は聞こえなかったのよね?」

「ええ。だから、きっと特別なモンスターだったんだと思う。何かしらの魔法がかかっていたのかも。」

 フレームは考え込む。「……スタージスたちが、そういう禁術の類を使っている可能性は?」

「あると思うわ。」

「図書館に行けば、その証拠が見つかると?」

「ええ。そこには、きっとそれを証明できる本がある。」

 フレームの脳裏に、スノーの姿がよぎった。

 ――あの時、俺もあの小さなドラゴンは特別な存在だと思っていた。

「園香、もしよければ……俺も、あることを確かめたい。」彼は窓の外に目を向ける。

 フェニックスの太陽が、昇り始めていた。

「……すべてが終わったら、な。」

 もしかすると――いや、限りなく小さな可能性だが、この力を持つのは、俺だけじゃないのかもしれない。


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