第24話 (3/3)
現在
「どういう意味? 私が正しかったって?」園香は問い詰めた。
ウェザロンは軽く咳払いをし、低く言った。「弱い者は、みんな死ななきゃならない。それが、お前が昔俺に言ったことだろ?」
彼の声には、何か重くのしかかるものがあった。
確かに、それは過去の自分が口にした言葉だった。
だが――
今、彼女自身が弱い者の側にいるというのなら――
それを受け入れることなんて、できるはずがなかった。
「今なら、お前の言ってたことを信じられる。」ウェザロンは静かに言った。 「お前の父親が教えたことは、全部正しいよ。」
園香は、棚の本を手当たり次第に引き抜き、タイトルを確かめた。
「どの本なの?」
「どれも興味深い内容ばかりだから、読んでいるだけさ。」ウェザロンは淡々と言った。「……お前、もう帰れよ。親が探してるぞ。」
ドキリとした。園香は手を止め、彼を見た。「どうして、それを……?」
ウェザロンはゆっくりと顔を伏せ、シアンの瞳に影を落とした。「……俺たち全員がバカだと、本気で思ってるのか?」
ぞくり、と背筋が冷えた。
目の前の彼は、もうかつてのウェザロンではなかった。
――私は、誰に向かって問いかければいいの? 千もの疑問が胸にあふれたが、それをぶつけるべき相手は、もうここにはいなかった。
「帰る前に、本は元の場所に戻せよ。」彼は、背を向けた彼女にそう言い放った。
園香は、今すぐにでもここを飛び出したかった。
だが、逃げるように立ち去るのが悔しくて、本の背表紙を丹念に探り続けた。
しかし、そこにあったのは医学や自然科学の専門書ばかり。
彼女の家の蔵書にもあるようなものばかりで、本当に知りたいことは何一つ見つからなかった。
視線を上げると、ウェザロンはまるで彼女がそこにいないかのように、黙々と本を読んでいた。
彼女は、そっと彼に近づいた。 何を読んでいるのか、確かめるために。
だが、彼女がすぐ後ろに立った瞬間、彼は本を閉じ、それを机の下の収納に滑り込ませた。
「行けって言っただろ。」彼の声は、先ほどよりも僅かに鋭さを増していた。
そして次の瞬間、彼は立ち上がり、園香の腕をつかんだ。
強く――だが、傷つけない程度に。
ウェザロンも強くなった。オミオだけじゃない。彼も――
彼は園香を引きずるように廊下を駆け抜け、玄関ホールへ向かう。
――ガシャンッ!
その時、激しい音が響いた。
振り向くと、テラスの扉が破られ、見知らぬ二人の人物が屋敷の中へと侵入していた。
そして――
園香が何が起こったのか理解する間もなく、
一人が彼女に向かって突進してきた。
「――ッ!」
瞬く間に腕を取られ、首を締め上げられる。
抵抗する間もなく、抑え込まれた。