第24話 (1/3)
園香は、どうしてもあの忌々しい図書館に何が隠されているのかを突き止めなければならなかった。
診察室を飛び出し、軋む階段を駆け下り、箱のような木骨造の建物から勢いよく飛び出す。
そして、通りを飛んでいた最寄りの竜騎士に向かって手を振り、止まるよう合図を送った。
漆黒の夜空を思わせる旅のドラゴンが、道端の広いテラスに舞い降りる。
その巨大な翼がゆっくりと降り、スロープを作った。
園香は素早く竜に乗り込み、御者に料金を渡し、漆黒の車体の客室へと腰を下ろした。
窓に顔を寄せながら、街を旋回する。
彼女の視線は、クレーターの底に広がる花の海に釘付けになった。
風を受けた換気装置の気流に煽られ、花々が波のように揺れている。
~結局のところ、私たちはただの土に還る。~
目を閉じた。
~―たとえ母さんが私を勘当しても、私は自分の力で真実を突き止めてみせる。~
冷たいガラスが頬を冷やす。
~私は、お前たちの汚れた秘密を暴く。~
図書館を囲む鉄線のドームの前で、竜のタクシーは彼女を降ろした。
石造りの門に刻まれた氷薔薇の紋章が、冷たい微笑みを浮かべている。
しかし、園香には笑い返す力は残っていなかった。
彼女はゆっくりとマフラーを外した。
護衛たちに、それがただのスカーフではなく、ブラックウォーターの顔を隠していたものだと示すために。
淡いラベンダーブルーの瞳、しなやかに形作られた唇、そして豊かに波打つ深い青の髪――
それが、彼女の入場券だった。
護衛たちは、何の質問もせずに彼女を通した。
門のアーチは、まるで大きく開いた竜の顎のように園香を飲み込んだ。
彼女はアーケードを足早に進み、とがった塔を持つ城の内部へと呑み込まれていく。
革靴のヒールが花崗岩の床を打ち鳴らす。
タッ、タッ、タッ。
――本を読む時間だ。
今度こそ、邪魔されるつもりはない。
絶対に。
今度は、答えを手に入れるまで、ここを出る気はなかった。
重厚な図書館の扉の前で、園香は立ち止まった。
手を伸ばし、オーク材の扉に触れる。
指先が、赤く塗られたセージの花の彫刻をなぞる。
そして、ゆっくりと押し開いた。
――しかし、彼女はそこで一人ではなかった。
扉の向こうの机に、誰かが座り、本を読んでいる。
細身の姿勢、その鋭い雰囲気――
すぐに分かった。
そこにいたのは、よりによって ウェザロン だった。
「何の用だ?」ウェザロンは苛立たしげに吐き捨てた。
園香は言葉を探したが、出てきたのは感情ばかりだった。
それを押し込めるのに、少し時間が必要だった。
「オミオが死んだ。」
「知ってる。」ウェザロンは不機嫌そうに答えた。「それで、ここに来たのか? オミオがいなくなったから、今度は俺か?」
「違う。」
その瞬間、胸の奥で嵐が吹き荒れた。
それは肺から空気を絞り出し、心を涙で満たし、これまで彼に抱いていた怒りをすべて消し去った。
目尻から最初の涙がこぼれ、頬を伝い落ちる。
「ごめんなさい……。全部……起こったこと、全部……。あなたの言うことを聞かなかったことを、後悔してる……!」
ウェザロンはゆっくりと本を閉じた。「でも、正しかったのはお前のほうだ。俺じゃない。最初から、お前が正しかったんだよ。」