第21話 (1/4)
期待に満ちた目で、彼女はフレームを見つめていた。
編み込まれた銀色の髪が、彼女の鋭い紅い瞳を際立たせる。
ティタニア・パブロンは、堂々とその獲物を身に纏っていた。肩には分厚いイエティの毛皮――まるで戦利品のように掛けられている。
彼女の腕を証明するには、あまりにも過剰な証拠だった。
ニューシティで彼女の名を知らぬ者などいない。
――キャプテン・ティタニア・パブロン。
それはすでに伝説となっていた。
フレームも、自分の目の前にいるのが誰なのか、十分理解していた。
だからこそ、迷わず名乗った。
「ゴスターの血か。なるほどな、納得だ。」ティタニアはどこか納得したように言った。
「どうやって氷竜を手なずけた? どこかに電撃装置でも仕掛けたのか? それとも、何か食わせたか?」
「いいえ。暴力は一切使っていません。」フレームはきっぱりと答えた。「彼は理解したんです。従わなければ、命を奪われると。」
ティタニアの目が細められる。疑念を含んだ視線だった。
「……他のモンスターと同じように。」
「モンスターは馬鹿だ。」ティタニアは即座に否定する。「言葉を理解する個体など、今まで一度も確認されたことはない。だが、目の前の竜は明らかに異質だった。この個体は例外のようだな。」
「……例外?」
「こいつは、隔離ゲートの機構を突破するほどの知性を持っていた。」ティタニアの声には、かすかに警戒が滲んでいた。「通常、モンスターは無理やり狭い隙間を通ろうとはしない。それに、自らゲートを閉めようとしていた人間の進路を、わざわざ塞ぐような行動も取らない。それができる時点で、こいつは今までのモンスターとは一線を画す。」
しばしの沈黙が落ちる。
「――それにしても、こいつが“お前の言葉”を理解できるのは、異常すぎる。」
フレームは彼女をまっすぐ見つめ、静かに問いかけた。「キャプテンは、生まれたばかりの赤ん坊が、最初から言葉を話せるのを見たことがありますか?」
「……そんなもの、いるわけがない。」
「俺も、見たことがありません。」
そう言って、フレームは口を閉ざした。
ティタニアはため息をつき、片手を腰に当てながら、その場で動かない氷竜を見つめた。
血に染まった片目が、まっすぐ彼女を捉えている。
「私には、これを決める権限はない。」彼女はそう言い放つと、すぐさま部下たちの方へ向き直った。「だが、どのみちこいつはここから退かさねばならん! それも、今すぐにだ!氷竜を拘束し、街の外へ搬送しろ! さっさと動け!」
部下たちはすぐに指示に従い、氷竜の拘束に取り掛かる。
「……これから、彼はどうなるんですか?」フレームが尋ねた。
ティタニアは眉を上げる。「問題は、それよりもお前がどうなるかだ、ゴスター・ジュニア。」