第19話 (4/4)
遠くから、リサレはフレームが氷竜を撃ち落とすのを見ていた。その間も、彼女は盗んだ旅行ドラゴンに乗り、彼の元へと急いでいた。
ためらいもなく、倒れた騎手の遺体から乗騎を奪い取り、その鞍に飛び乗ったのだ。
リサレは、もう誰かを失うことに耐えられなかった。
ましてや彼を。
自分の命を顧みず、他人のために戦う愚かな男を。
たとえ、彼のために命を張る者など、ほんの一握りしかいなかったとしても。
自分を守るために、彼が必死になったことを。
そして、初めて学校で見たときから、彼のことが気になっていたことを。
リサレは、よく分かっていた。
氷竜の巨体が地面を削りながら滑り、瓦礫の山を生み出していく。
フレームは、その頭部のすぐ前へと飛び降りた。
次の瞬間、モンスターの口が開かれる。
――フレームは、焼き尽くされる。
彼の命が、竜の炎に飲み込まれる。
リサレの目が潤んだ。
もしフレームがいなければ、彼女は新たな勇気を持つこともなかった。
あの暗闇の森で三年間、ただ生きることだけを考え、変化など望むことさえしなかった。
ただ怯え、じっと身を潜めるだけの存在だった。
けれど、フレームは違った。
彼は、たった一瞬だけ、死んだはずの父を蘇らせてくれた。
その願いも、その目標も、その夢も。
リサレだけが知る真実があった。
――フレームなしでは、治療薬を手に入れ、スタージス家を打ち倒すことはできない。
彼なしでは、自分は……
リサレは急降下し、旅行ドラゴンの背から飛び降りた。
その瞬間、体が勝手に動いた。
脚が、大地を蹴った。
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フレームが武器に手を伸ばした瞬間、強い衝撃が彼を弾き飛ばした。
リサレが全力で彼の脇腹に体当たりし、竜の牙の射程外へと押し出したのだ。
しかし、彼女は――
……炎に飲み込まれた。
燃え盛る赤い業火が、彼女の全身を覆い、一瞬で呑み込んだ。
ラヴァットと同じように。
「……いや……」フレームはかすれた声を漏らした。「……いやだ……」