表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

79/218

第19話 (4/4)

 

 遠くから、リサレはフレームが氷竜を撃ち落とすのを見ていた。その間も、彼女は盗んだ旅行ドラゴンに乗り、彼の元へと急いでいた。

 ためらいもなく、倒れた騎手の遺体から乗騎を奪い取り、その鞍に飛び乗ったのだ。

 リサレは、もう誰かを失うことに耐えられなかった。

 ましてや彼を。

 自分の命を顧みず、他人のために戦う愚かな男を。

 たとえ、彼のために命を張る者など、ほんの一握りしかいなかったとしても。

 自分を守るために、彼が必死になったことを。

 そして、初めて学校で見たときから、彼のことが気になっていたことを。

 リサレは、よく分かっていた。

 氷竜の巨体が地面を削りながら滑り、瓦礫の山を生み出していく。

 フレームは、その頭部のすぐ前へと飛び降りた。

 次の瞬間、モンスターの口が開かれる。

 ――フレームは、焼き尽くされる。

 彼の命が、竜の炎に飲み込まれる。

 リサレの目が潤んだ。

 もしフレームがいなければ、彼女は新たな勇気を持つこともなかった。

 あの暗闇の森で三年間、ただ生きることだけを考え、変化など望むことさえしなかった。

 ただ怯え、じっと身を潜めるだけの存在だった。

 けれど、フレームは違った。

 彼は、たった一瞬だけ、死んだはずの父を蘇らせてくれた。

 その願いも、その目標も、その夢も。

 リサレだけが知る真実があった。

 ――フレームなしでは、治療薬を手に入れ、スタージス家を打ち倒すことはできない。

 彼なしでは、自分は……

 リサレは急降下し、旅行ドラゴンの背から飛び降りた。

 その瞬間、体が勝手に動いた。

 脚が、大地を蹴った。


 xxx


 フレームが武器に手を伸ばした瞬間、強い衝撃が彼を弾き飛ばした。

 リサレが全力で彼の脇腹に体当たりし、竜の牙の射程外へと押し出したのだ。

 しかし、彼女は――

 ……炎に飲み込まれた。

 燃え盛る赤い業火が、彼女の全身を覆い、一瞬で呑み込んだ。

 ラヴァットと同じように。

「……いや……」フレームはかすれた声を漏らした。「……いやだ……」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ