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第19話 (3/4)

 

 現在


 灼熱のブレスがラヴァットと彼の狩猟竜を焼き尽くした。

 次の瞬間、彼らは急速に落下していった。

 モスがすぐさま後を追い、燃え尽きた仲間が地面に叩きつけられるのを阻止しようとした。

 ラヴァットはやられた。

 フレームは、彼がまだ生きていることを願った。

 ――生きていなければならない。

 生きているはずだ。

 そうでなければ……そんなことは考えたくもなかった。

 だが、現実は違う。

 フレームには分かっていた。

 ラヴァットはもう助からない。

 彼は死んだ。

 周囲に散らばる猟師たちの黒焦げの亡骸と同じように。

 竜の炎に焼かれ、崩れた瓦礫の中に無残な姿で横たわっている。

 まるで、焼きすぎて形の崩れたパンのように。

 フレームの中で、何かが崩れた。

 涙が喉を締めつけ、意識を飲み込もうとする。

 痛みが頭を支配し、理性を引き裂こうとしていた。

 ――ラヴァットが……

 喉の奥で嗚咽が詰まり、歯の隙間に押し止められた。

 ――もう二度と……

 ――いや……そんなことを考えている場合じゃない。

 いくら泣いたところで、何も変わらない。

 今ここで自分を見失えば、次に死ぬのはモスだ。

 ~望むものを口にしろ。望まぬものではなく。~

 父の教えが、フレームの心に痛みを塗り潰し、彼を現実へと引き戻す。

「俺は、みんなを守る。」フレームは静かに呟き、23に合図を送った。

 速度を上げろ。

 この戦いを終わらせるために。

 彼らは氷竜の背後を狙い、できる限り接近しようとする。

 だが、その間も細心の注意が必要だった。

 たった一瞬でも気づかれれば、今度は自分たちが炎の餌食になる。

 蒸し暑い空気が鉛の毛布のように彼らを包み込んだ。煙の渦が視界を遮る。モンスターの周囲の熱は凄まじく、コンソールの温度計はすでに五十度を示していた。

 関係ない。もっと近づかないと。

 五十一度、五十二度、五十三度……六十度。

 23は巨大な鱗に覆われた首筋をかすめ、そのまま一直線に頭部へと向かった。

「名前はなんだ!」フレームは叫んだ。声が震える。

 ~今はダメだ。冷静になれ。ならなければ。~

 氷竜はゆっくりとこちらに頭を向けた。「知ってどうする! 貴様にはどうせ理解できん!」雷鳴のような声が響き渡る。口が開かれる。

 23は即座に回避し、旋回する。

「俺には聞こえる! 俺の名前はフレームだ! 戦うのをやめて、話し合おう!」

 氷竜は炎を止め、不敵な笑いを上げた。「ほう、俺の声が聞こえるというのか。それならよく聞け。俺は戦う。人間が滅びるその日まで。俺が死ぬ、その時まで!」

 耳をつんざくような咆哮が響き渡る。次の攻撃に向けて、力を溜めている。

「なら、仕方ない。」フレームは歯を食いしばり、サンダーガンを抜いた。

 

 xxx


 氷竜を殺すには、強力な電撃を何度も与える必要がある。三発で倒れるものもいれば、二十発耐えるものもいる。幼いモンスターならば必要な電撃は少なく、とくに急所に当たれば一撃で仕留めることも可能だ。しかし、この個体は完全に成長しきった大柄な氷竜だった。フレームはサンダーガンの出力を最大まで引き上げた。

 氷竜が尻尾を振り抜く。巨大な動きが灼熱の風を巻き起こす。

 23は間一髪で回避し、素早く旋回して竜の腹下へと潜り込んだ。ここなら、炎の直撃を受けずに安全に反対側へ回り込める。23は巨大な体の周囲を回り込み、ついにその真上へと位置取った。

 一、二。一、二。

 フレームは最適なタイミングを待つ。

 氷竜が首を背後へと向ける。

 今だ。

 フレームは両手のサンダーガンを引き絞り、竜の翼端に向けて発砲した。

 高圧の電撃が翼を麻痺させる。

 その瞬間、強靭な翼が動きを止めた。

 氷竜はバランスを崩し、そのまま墜落していく――フレームも一緒に。

 サドルに固定されたロープが彼を鞍から引きずり落とした。

 地面が迫る。

 着地直前、フレームは素早くフックを外した。

 23が猛スピードで駆けつけ、彼を飛行中に受け止める。

 そのまま急降下し、墜落した氷竜へと向かう。

 怪物は市街地の建物群に衝突し、その巨体を瓦礫に埋もれさせていた。

 崩れた瓦礫が転がり落ち、竜の周囲の斜面を転がり落ちていく。

 フレームは住民が巻き込まれていないことを祈りながら、鐙からブーツを抜き、サドルから飛び降りた。

 着地したのは、巨大な氷の牙を持つ竜の頭部の真正面だった。

 フレームは膝を伸ばしながら立ち上がり、低く怒りを滲ませた声で問いかける。「なぜ、人間を滅ぼそうとする?」

 氷竜の瞳には、純粋な憤怒が映っていた。「人間こそが、すべての悪の根源だからだ。」竜は大きく口を開けた。


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