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第19話 (2/4)

 

 その3年前

 

 14,602年、

 暗黒の4日目。

 

「モンスター猟師の三大原則を言える者はいるか? はい、そこの君!」

 教官は二列目の一人に発言を許した。

「猟師は時間を無駄にしない。」

 教官は背中で手を組み、頷いた。「正解だ。猟師は殺される前に殺さねばならん。怪物を目の前にして、一瞬でも躊躇すれば、それが命取りとなる。戦いの行方は、刹那の判断にかかっている。生き残りたければ、同情は捨てろ。甘ったれはここには不要だ。もしお前らが肝の据わった精神を持てないなら、さっさと医療部へ行って看護師にでもなれ。地上は感傷に浸る場所じゃない。さて、次だ。後ろの若いの、お前! ゴールドマン!」

 ラヴァットは仮眠から弾かれるように飛び起きた。

「えっ? 何? どこ?」

 数人の仲間がくすくすと笑う。

 フレームは横目でラヴァットを見た。彼の席はすぐ隣だった。

「ゴールドマン、明らかに学ぶ気がないようだが、一体なぜこの訓練に参加しているのか教えてくれないか?」

 教官は顎を突き出し、問い詰めるような視線を向けた。

 ラヴァットは気まずそうに口元を掻いた。「いや、その……俺、ただ地上を見てみたくてさ。」

 教官は眉を上げた。「地上を見てみたい、ほうほう。だがな、今のお前の授業態度では、せっかく地上に出ても長くは持たんぞ。モンスターは予測不能だ。一瞬の油断が死を招く。そのことを肝に銘じておけ。」

 彼は黒板に向き直り、チョークで何かを書き始めた。だが、読みにくかった。恐らく彼の字が汚いせいだろう。

「第二の原則は、『猟師は獲物を無駄にしない』。狩ったモンスターの残骸は、可能な限りすべて利用しなければならない。」彼は振り返り、教室を見渡した。「さて、第三の原則を知っている者はいるか?」

 ジモンが手を挙げた。

「よし、バッティアモ!」

「猟師は命を無駄にしない。仲間も、自分自身も守る。」

「正解だ。」

 教官は頷いた。「バッティアモが言った通り、まず重要なのは、無謀に死を選ばないことだ。そして、チームのために最善の判断を下すこと。猟師は、できる限り多くの命を救う選択肢を常に選ばねばならん。」

「さらに、この原則には『自分の寿命と健康を最優先する』という意味も含まれている。体力のない者はチーム全体の負担となり、作戦の成功率を大きく下げる。風邪だろうと骨折だろうと、どんなに小さな怪我でも、それが命取りになる可能性がある。」

 フレームは落ち着かず、椅子の上で身をよじらせた。この講義を聞いているのが、正直つらかった。

 ~猟師は時間を無駄にしない。~

 ~猟師は獲物を無駄にしない。~

 ~猟師は命を無駄にしない。~

 なぜ誰も、この矛盾に気づかないのか、フレームには理解できなかった。

 モンスターだって、生きているじゃないか。

 彼は知らず知らずのうちに苦い表情を浮かべていたらしく、ラヴァットがペンの先で軽く彼をつついた。

「大丈夫か?」小声で尋ねる。

「変なもの食べたみたいだ。」フレームは嘘をついた。

 ラヴァットはカバンからボトルを取り出す。「ほら、これ飲めよ。カモミールティーだ。お腹の調子には効くらしい。」

 フレームは感謝しながら、一口飲んだ。

「俺は、本気でいつか地上に住めるようになるといいと思ってる。」ラヴァットは低い声で続けた。「氷の大地の向こうには、何があるのか知りたいんだ。」

 フレームは手に持ったカモミールティーのボトルをじっと見つめた。「ただの雪原だろ。それはもう分かってる。」今まで読んできた地球や気象に関する本を思い出しながら言った。

 しかし、ラヴァットは自信満々に人差し指を立てた。「そう思い込んでるだけさ! でも、本当に誰かが世界を一周して帰ってきたことなんてないだろ? 誰にも分からないんだよ。もしかしたら、この星全体が氷に覆われてるわけじゃないかもしれない。もしかしたら、ほかの場所では氷が溶けて、また花畑が広がってるかもしれない。誰も本当の姿を知らないんだ!俺はいつか、地上を探検するつもりだ! 最果ての前線基地を超えて、その先に何があるのか、自分の目で確かめる。そして、それがただの雪原だったとしても、それはそれでいい。少なくとも、そのとき俺は星空を見ているはずだからな。」


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