第18話 (1/2)
彼女は編み込んだ縄のひとつを使い、フレームの手首を縛った。
彼はリサレの手際の良さに驚いた。
――こんなに身軽だったか? もともと運動神経が良かったのか?
フレームが大人しくなると、彼女は手を離し、立ち上がった。
「お願い、私の手を借りて。もう隠れて生きるのは嫌なの。あなたの足手まといにはならないわ。自分の身は自分で守れる。」そう言って、彼を引き起こした。
結ばれた縄が彼を縛り、共に進むよう強いる。
まるで手綱を握られた竜のような気分だった。
フレームは沈黙した。
――もし、リサレが傷ついたら……俺は絶対に許せない。
二人は下草を踏み分けながら進み、水たまりの前で足を止めた。
フレームは、ここをよく知っていた。
脳内で可能性をひとつひとつ検証する。
だが、偶然で片付けるには、あまりにもできすぎた話だった。
「……どうして、これを知ってる?」
リサレは視線を逸らした。「実は……あなたとゴドからよ。」
フレームは黙って続きを待った。
「……あの日、私はこっそり、あなたたちの後をつけていたの。」
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その4年前
14,601年、
収穫期48日目。
「行こうぜ! 放課後に宝探ししようぜ!」
「どうしようかな……」
「なあ、考えてみろよ! もし本物の宝石を見つけたらどうする? もしかしたら、ダイヤモンドだってあるかも!」
「そうかもな……でも……懐中電灯がないとダメだろ。」
すると、ゴドはリュックをごそごそと探り、得意げに二本の懐中電灯を取り出した。
「これでも?」
フレームは考え込んだ。
「うーん……」
だが、その声にはすでに笑みが混じっていた。
「もう言い訳できないな。」
少年たちが無邪気に話しているすぐそばで、リサレは少し離れた場所に座り、黙々と昼食のサンドイッチを食べていた。
黒い迷宮。
闇に包まれ、迷い込んだ者は二度と戻れないとされる伝説の場所。
そんな場所に、彼らは行こうとしているのだ。
リサレは、この計画を全く良いとは思わなかった。
だが、止めることもできなかった。
そもそも、彼らとはそれほど親しいわけではない。
だから「やめろ」と言ったところで聞く耳を持たないだろう。
かといって、大人に密告するなんて選択肢もなかった。
それでも――
何もしないというのは、あまりに無責任な気がした。
彼らのどちらかが、本当に跡形もなく消えてしまったら――
そんなこと、絶対にあってはならない。
授業が終わると、リサレは校舎の備品庫から懐中電灯を手に入れ、二人の後を追った。
しかし、彼らに気づかれないよう、慎重に距離を保ちながらついていく。
彼らが曲がりくねった山道を抜け、黒い迷宮へと足を踏み入れると、リサレは懐中電灯を点けずに進んだ。
前方に伸びる二つの光の筋だけを頼りに、慎重に進む。
彼女はじっと観察した。
少年たちは進む道をどうやって記録するのか。
分かれ道に差し掛かるたびに、岩の表面に小さな刻みを入れていた。
――少なくとも、彼らは賢く行動しているようだった。
「次は電飾を持ってこようぜ……」ゴドがぼやく。「そろそろ腕がもげそうだ!」 懐中電灯を振り回しながら、不満げに言った。
彼らは迷宮の奥へ、さらに奥へと進んでいく。
途中、一度か二度、水分補給のために立ち止まった。
暗闇の通路はどれも似たような景色だった。
やがて、彼らは巨大な空洞の入口に辿り着いた。
目の前には、広大な洞窟湖が広がっていた。
湖面はほぼすべての地面を覆い、小さな波が砂利の岸辺に優しく寄せていた。
リサレは息を呑みながら辺りを見渡した。
――その瞬間。
目の前で、恐ろしい出来事が起こった。
フレームが一歩前へ出た。
足元の水たまりに踏み込み、バランスを崩す。
――ズルッ。
彼の体が、闇の奥へと引きずり込まれた。
~バシャッ!~
一瞬のうちに、光が飲み込まれる。
リサレは隠れていた場所から飛び出そうとした。
すぐにでも湖へ飛び込もうとした――
だが、それよりも早く。
ゴドが跳び込んだ。
もう一度、水音が響く。
そして彼もまた、姿を消した。
リサレは半分ほど数えたが、誰も浮かび上がってこなかった。
彼女は必死に考えた。
このまま街へ戻り、助けを呼ぶべきか? だが、その頃には手遅れになっているかもしれない。
リサレは覚悟を決めた。
懐中電灯のスイッチを入れ、砂利の上を駆け抜け、息を止めて暗闇の湖へと飛び込んだ。
水が頭上で閉じる。
リサレは必死に目を凝らした。
ゴドもフレームも……どこにもいない……いや!
目の前、ほんの数メートル先。
岩の天井にぽっかり空いた穴から、銀青色の鱗に覆われた尾が垂れ下がっていた。
あの揺れるヒレ……まさか……
次の瞬間、それは湖の奥へと沈んでいった。
リサレの目が見開かれる。
長く黒い髪が、水草のように揺れ、赤く裂けた瞳がじっと彼女を見つめていた。
――人魚。
彼女の心臓が止まりそうになる。
一瞬だけ、二人の視線が絡み合った。
だが、次の瞬間、怪物は深淵へと消えた。
あの中に、二人はいるのか?
人魚にさらわれたのか?
リサレは急いで後を追った。
だが、すぐに息が苦しくなる。
酸素が足りない。
彼女は天井に開いた最も近い穴へと向かい、水面へと浮上した。
頭を水から出した瞬間、遠くに二つの光の筋が揺らめくのが見えた。
安堵の息が漏れる。
無事だった!
そう思った矢先、リサレはようやく気がついた。
周囲の壁や天井の至るところから、鍾乳石のように逆さまに木々が生えていることに気がついた。