第17話 (5/5)
彼女はフレームを凝視したまま、微動だにしなかった。
彼の揺るぎない決意、静かな怒り、その言葉の一つひとつ……すべてが彼女の心を揺るがせた。
フレームはスタージス家を恐れていなかった。いや、それどころか――
彼の青い瞳には、確かな自信が灯っていた。
どれほどの時間が経っただろう。
リサレは、亡き父の姿を忘れかけていた。
だが今、この瞬間、彼がすぐそばに立っているように感じた。
フレームの背後で、彼らを見守っているかのように――
彼女の父もまた、すべての病を癒すと語っていた。
その信念を胸に、死へと向かう旅へと出たのだ。
スタージス家のシャトーへ。
リサレの指が、無意識のうちにマントの布を強く握りしめた。
この一族……!
病に苦しむ者たちから薬を奪い、それを知る者の口を封じ、リサレをこの洞窟へと追いやった。
この、凍えるような、命すら削られる場所へ。
何かが彼女の中で弾けた。
張り詰めていた恐怖が砕け散り、代わりに燃え上がったのは、深く、強い怒り。
それは、かつて押し殺していたはずの古い憎悪だった。
「――私が、そこまで案内する。」
もう、守りに徹する生き方はたくさんだ。
スタージス家が自分を見つけるかどうかを怯えながら待つだけの人生には、もううんざりしていた。
あまりにも長く、恐怖と絶望の中に生きてきた。
あまりにも長く、無力だった。
だが、もう違う。
彼女は、もう一人ではないのだから。
「ダメだ、一人で行く。」フレームは静かに言った。「お前に何かあってほしくない。」
「そんなこと頼んでないわ。」リサレは火を踏み消し、闇の中へと身を沈めた。
フレームの懐中電灯だけが、彼女を照らす唯一の光となる。
彼は光を向け、彼女を見つめた。
「選択肢はないわ。」リサレは淡々と言った。「そもそも、あなたを捕えたのは私よ。覚えてる?」彼女は網を指さす。「父が始めたことを、私が終わらせるの。あなたの意思なんて関係ない。」
そう言い捨てると、彼女はくるりと背を向け、籠を手に取り始めた。
背負えるように革のベルトが取り付けられていた。
「一人じゃ不可能よ。でも二人なら、勝算がある。」
突然、光が消えた。
暗闇が森を支配する。
あまりにも静かだった。
一歩ごとに、足音がはっきりと響く――
忍び寄る者の気配さえも、はっきりと聞こえるほどに。
リサレは背を向けたまま、瞬時に悟った。
フレームが今、彼女に飛びかかろうとしていることを。
ギリギリのところで彼女は身を翻し、攻撃を回避した。
暗闇にはすでに慣れている。
だからこそ、わずかに顔を向けただけでフレームの意図を見抜いた。
彼は彼女を、彼女自身の網で捕らえようとしている。
「悪いけど、お前を危険な目に遭わせるわけにはいかない。」フレームはそう言うや否や、網を彼女めがけて投げつけた。
リサレは草地を転がり、素早く木に登った。そこから幹から幹へ、枝から枝へと飛び移り、やがて彼らの頭上にある梢へと到達した。そして、フレームの背後へと回り込む。
彼女は勢いよく飛びかかり、彼を地面に押し倒した。
両手を背中に押さえつけ、膝で体を固定するように重心をかける。
「私は行く。わかった?」