第17話 (4/5)
「その病の薬があるのか?」
フレームが問いかけた瞬間、リサレは歩き出し、手招きして彼に後をついてくるよう促した。
彼は懐中電灯を低く向け、暗闇の森を進みながら彼女の背中を追った。
歩いているうちに、彼女の服が少し大きめであることに気づく。
マントの両翼が開き、その隙間から彼女の背中が見えた。
レザーのチュニックはゆるく、腰回りを締めるために靴紐のような細い紐が巻かれている。
そこには、彼にも見覚えのある小さな楽器――彼女のカリンバがぶら下がっていた。
「私が病にかかったとき、父は秘密の庭から花を盗んだの。」 リサレは語り始めた。「それで、私は助かった。でも、そのせいで家族は死刑を宣告されたわ。だけど私は逃げた。黒い迷宮へと駆け込んで……」彼女は前の枝を押しのけながら言葉を続ける。
「……それからずっと、ここで暮らしてるの。」
フレームがその場所を照らそうとしたそのとき、リサレは茂みの間を飛び越え、素早く火打ち石を弾いた。
火花が飛び散り、乾いた草の束に燃え移る。
炎がじわじわと広がる中、フレームは周囲を見渡した。
焚き火の跡があった。
木の幹から幹へと、ついたてのように網が張り巡らされ、まるで住居の壁を模しているかのようだった。
その間には、枝や茎で組まれた棚が置かれ、編み込まれた籠や粘土の壺、そして石や木で作られた様々な道具や武器が並んでいた。
しかし、寝床らしきものは見当たらない。
「お前、ここで三年間……ひとりで生きてきたのか?」
言葉が詰まった。
女は、ずっとこんなにも近くにいたのか?
もしスノーが死んだあと、もう一度ここへ来ていたら……
目尻に一粒の涙がこぼれた。
リサレはそれを見逃さなかった。
「やめて。」気まずそうに腕を組み、自分を抱きしめるようにして言った。
「私なんかのために泣く価値なんてないわ。ここに残ると決めたのは、私自身だから。」
フレームは黙って彼女を見つめた。
「街へ戻れば、私は捕まって処刑されるの。」
「それが自分の意思だっていうのか? そんなの、選択なんかじゃない!」
「選択肢がどれだけ少なくても――死だけは、誰でも選べるのよ。」
彼女の言葉に、フレームははっとしたように身を強張らせた。
「だって、あなたもそうでしょう?」彼女の声には、わずかに沈痛な響きが滲んでいた。「ここに来たのは、死ぬためなんじゃないの?」
「その秘密の庭はどこにある?」フレームは静かに尋ねた。
リサレは真っ直ぐ彼を見つめた。
焚き火の炎が彼女の紫の虹彩に映り込み、まるで燃え上がるアメジストのようだった。
「スタージス家のシャトーよ。」
フレームは踵を返した。
「待って! まさか本当に行くつもり?」リサレは慌てて彼の前に飛び出し、道を塞いだ。
「ついてくる必要はない。」
「そんな簡単にいくはずないでしょ! あの庭から誰にも見つからずに脱出するのがどれほど難しいか、あなたにはわかってない! そして最後にはみんな……。」
フレームは袖をまくり、腕に刻まれた銀色の線を見つめた。「正直言って、俺に何を失うものがある?」
リサレは言葉を失った。
「俺はその治療薬を手に入れる。そして、それをすべての人に届けるんだ。二度と誰もこの病に苦しまないように。」フレームの顎がわずかに強張った。「俺が、すべてを守る。」