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第17話 (1/5)

 

 前日

 

 14,605年、

 収穫期23日目。

 

「どこへ行くつもりだ?」

 モスは格納庫と着陸場の間の柵の柱にもたれかかっていた。彼はフレームを現行犯で捕まえたのだ。

 フレームはちょうど23に鞍をつけていた——駐屯地を離れるために。

「静かに死ねる場所へ。」

「別れの挨拶もしないのか?」モスは腕を組んだ。「お前の父さんや他のみんなが疑問に思うだろう。俺は何て答えればいい?」

「申し訳ないって伝えてくれ。」フレームの声には絶望がにじんでいた。その感情に偽りはなかった。彼は敗北した。自分さえ守れなかったのだから。

 彼に残された唯一の願いは、かつて友を失ったあの場所へ戻り、死をもって彼と再び一つになることだった。

 彼はベルトを締め、鐙に足をかけ、鞍へと飛び乗った。

「さらばだ、ラヴァレ。」

「安らかに眠れ、ゴスター。」

 23が飛び上がる。

 重い心を抱えたまま、フレームは格納庫と共に自らの過去を背後へと置き去りにした。

 狩猟竜の背に乗り、西の駐屯地を離れると、彼は暗闇に広がる坑道へと向かった。

 コンクリートの壁と街灯の連なりを駆け抜けながら、耳元で換気装置の唸りが響く。

「しっかりつかまれ!」

 23は速度を上げ、フレームは前傾姿勢を取った。

 あと一度だけ飛べばいい。それで全ては指の隙間からこぼれ落ちる。ただこの一度の飛行で、彼のモンスター猟師としての時間は終わる。もう戦う必要はなくなるのだ。

 彼と狩猟竜は風を裂く矢と化した。

 帽子の隙間からいくつかの髪の束がほどけ、顔に張りつくが、そんなことはどうでもよかった。

 もっと速く、もっと速く、もっと速く――未来を追い越し、今という瞬間だけが残るまで。自由だけが残るまで。

 国境の検問所の前で、その狂奔は突如として終わりを迎えた。

 赤と白の縞模様の遮断機の前で速度を落とし、警官たちに身分証を提示する。

 フレームの戦闘服を一目見ただけで、彼らは何の疑いもなく通行を許可した。

 脛に装備したサンダーガンが彼が猟師であることを示し、戦闘服に縫い込まれた紋章がそれを証明していた。

 彼らは国境の検問所を越え、トンネルの終わりに輝く光へと飛び出した――フェニックスの太陽の輝きへと。

 あと百メートル、あと十メートル、あと一メートル。

 坑道は彼らをまるでしゃぶり尽くされたヒマワリの種の殻のように吐き出した。

 耳にかかっていた圧が消え、その隙間に騒音が流れ込む。

 都市の喧騒が、騎乗竜の羽ばたきや、一角獣の蹄の響き、そして絶え間なく鳴り続ける換気ファンの唸りと混ざり合った。

 足元には、枯れた火山の底に広がる花畑があった。そこから蛇行する坂道が岩壁を這うように続き、岩をくり抜いて造られた家々がクレーターの壁にしがみつきながら、彼らの飛行を無言で見つめていた。

 窓ガラスには彼らの影が映っていた――ひとりの騎乗者とその竜、後戻りできぬ運命へと進む姿が。

 23は滑らかにカーブを切り、流れるような環状航路へと合流し、フレームを市の外縁部へと運んだ。

 そして約束通り、そこで彼を降ろした。

「今まで、俺たちのためにしてくれてありがとう」 狩猟竜はそう言った。「俺たちは決してお前を忘れない。」

「ありがとう。」フレームは答えた。「助けてくれて。」

 彼は黒い迷宮の入口を見つめた。もうすぐ、闇に包まれた坑道の奥へと消え、二度と戻らない。二度と星の光を見ることも、誰かと言葉を交わすこともない。

「ひとつ、秘密にしてくれないか?」

 竜は耳をそばだてた。

「実は……俺が君たちを助けた理由は……」

 フレームはかつて手のひらに乗せた小さな竜の卵を思い出した。ただ落とせばよかった、そうすれば……

「……ただ、君たちを理解できたから……君たちの声が聞こえなかったら……俺もほかの人間と同じだった……俺は、自分がすごく偉いものだと思っていたんだ。」

「お前が人間として生まれたことに罪はない。」23が言った。「誰も、自分が何として生まれるかを選べなかった。人も、モンスターも。唯一重要なのは、生まれたあとに何をしたか、それだけだ。フレーム、お前は俺たちの英雄だ。お前が話すことを教えてくれたおかげで、俺たちはこの力を地下の竜たちへと広めることができた。お前が与えてくれたのは、言葉を交わす力、声を持つということだ。お前の功績によって、イニオ火山に生まれた俺たちモンスターは、これから先、人間の支配に抗う術を手に入れることができるんだ。」

「行く前に、一つ約束してくれないか?」フレームは懇願するように彼を見つめた。「頼む、誰も殺さないでくれ。」

 23は背を向けた。灰白色の鱗に太陽の光が反射し、無数の色へと砕け散る。

「もちろんさ。」

 力強く翼をはためかせ、彼は飛び立った。

「俺の時が来たら、また会おう、友よ。」

 彼は高く舞い上がり、市の駐屯地へと向かっていった。

 その姿は、やがて遠くに消える小さな点となった。

 フレームは視線を空に留めたまま、そっと額に手をやった。

 すでに二つの小さな膨らみが指先に感じられる。

 彼の密集した髪が、それらの成長する角を目隠ししていたが、それも長くはもたないだろう。

 だが、誰にもそれを見せるつもりはなかった。

 フレームは黒い迷宮へと向き直ると、懐中電灯を点け、足を踏み入れた。


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