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第16話 (4/4)

 

 現在


 ゆっくりと、園香はオミオを持ち上げた。彼を狩猟竜のもとへ運ぼうとしていたのだ。その頑丈な騎乗用モンスターは、落下の衝撃にも耐え、すでに起き上がろうとしていた。

 オミオの体は重かったが、園香は全身の力を振り絞って彼を引きずった。途中で彼の武器のひとつを落としてしまったが、拾う余力は残されていなかった。

 オミオは薄く目を開けた。「すぐそこに隔離ゲートがある」彼はかすれた声で言った。「俺の手がいる。俺の手がなければ、開けられない」

「分かってる。もうすぐだよ」

「二人じゃ無理だ」

「あなたを置いていくなんて、絶対にしない!」

「鋼索を俺の腕に巻け。しっかり締めろ。それで引き込みを作動させれば、骨を切断できる」

 彼の体はひどく震え、ほとんど動けない状態だった。それでも、かろうじて指を動かし、ズボンのマグネットストリップに固定されたエンターフックのピストルを指し示した。「早くしろ。ドラゴンが来るぞ」

 

 xxx


 園香はオミオの言葉を無視した。氷竜が迫る中、それでも彼を勇敢に運び続け、ひたすら鞍へと向かった。

 一歩ずつ、慎重に。

 そしてついに、彼女はたどり着いた。

 オミオを持ち上げ、彼を鞍に乗せると、自分もすぐさま前に座り、手綱を握った——まさに間一髪だった。

 氷竜が彼らに向かって猛スピードで突っ込んでくる。喉を赤々と燃やし、口を大きく開けて。

 彼らは飛び立ち、間一髪で炎の奔流をかわした。

 火の粉が降り注ぐ。そのうちのひとつが園香のスーツを焼こうとしたが、無駄だった。耐火性の生地がすぐに炎を消し去った。

 しかし、どれだけ防火性能が優れていても、回避の必要がなくなるわけではない。

 いくら雪用の防護服が猛火に耐えられるとしても、その中にいる人間までもが無敵というわけではなかった。

 彼女は狩猟竜をジグザグに操りながら隔離ゲートへと向かった。

 背後には執拗に追いすがる氷竜の気配。

 岩と氷に覆われた隠しシャフトが迫ると、園香は手綱を放し、後ろを振り向いた。「あなたの手!」

 彼女はオミオの腕を掴もうとした。「伸ばして!」

 だが、彼はすでに意識を失っていた。

 園香は歯を食いしばった。

 自分を憐れんでいる暇はない。

 彼女は狩猟竜をループ飛行で旋回させ、氷竜を振り切ると、そのまま岩盤の下へ潜り込んだ。

 ぎりぎりのタイミングで安全装置のスイッチへと到達。

 オミオの手をスキャナーに押し当て、園香はレバーを引いた。

 外門が開いた。

 彼らには十秒しかなかった。これは隔離ゲートが許可する最低限のカウントダウンだった。

 わずかな隙間ができた瞬間、彼らはそこへ飛び込んだ。

 激しい衝撃が走る。

 氷竜が頭を力任せに押し込み、巨大な体がパネルに叩きつけられた。

 門が開くにつれ、彼はさらに奥へと体をねじ込み、何が何でも彼らを追おうとしているかのようだった。

「どうして……?」園香はかすかに囁いた。「こんなこと、今までどのモンスターもしたことない……!」

 そして、もし内門が開いてしまったら何が起こるのか、彼女は瞬時に理解した。

 絶望的な表情で、彼女は氷竜とオミオを交互に見つめる。

 息が乱れる。

 この怪物を火山の中に入れるわけにはいかない。

 しかし、内門を封鎖すれば、オミオが……いや、二人とも……

 園香は強く目を閉じ、涙を飲み込んだ。「ごめんね、オミオ!」

 彼女は狩猟竜を緊急スイッチへ向かわせ、怪物を隔離室に閉じ込めようとした。

 だが、その瞬間——氷竜が素早く動き、尾を振り抜いて進路を塞いだ。

 まるで、園香の意図を見抜いていたかのように。

 嫌な予感がする。「……なぜ、知っているの?」

 しかし、先ほどとは違い、氷竜は何も答えなかった。

 本当に数時間前と同じ個体なのか?

 園香には確信が持てなかった。どの氷竜も見た目はそっくりだった。

 外門が閉まり、内門がゆっくりと開き始める。

 園香はオミオのピストルに手を伸ばした。

 この怪物を通してはいけない。

 戦うしかない。

 氷竜は、園香の命を奪う準備を整えていた。

 大きく口を開けたその瞬間、園香はオミオがあの日やったように、エンターフックを撃ち放った。

 だが——モンスターは彼女を欺いた。

 襲いかかるでもなく、炎を吐くでもなく、その一瞬を利用して後ろ足で床を蹴ったのだ。

 矢のような速さで園香の横をすり抜け、ちょうどパネルが十分に開いたその瞬間、氷竜はシャフトの奥へと飛び込んだ。

 フックは空を切り、虚しく宙に舞った。

 園香は凍りついたまま、ただ氷竜が闇の中へと消えていくのを見送ることしかできなかった。

「……何、今の……?」全身が震える。

 ゆっくりと顔を狩猟竜へ向けると、オミオがぐったりと鞍に倒れ込んでいた。

 まったく動かない。

 また涙がこみ上げてきた。

「オミオ……?」


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