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第16話 (2/4)

 

  帰路の飛行は、園香にとって永遠のように感じられた。

 徐々に手足がこわばり、疲労が襲ってくる。

 モンスターに見つからないように、オミオは狩猟竜をできるだけ高く飛ばせた。

 この高度からは、地平線が見渡せた。

 ほんのわずかに湾曲したその線の向こうへ、沈みゆく太陽が雲を紫とピンクに染めていく。

「もうすぐだ。あそこに隔離ゲートが見える。」

 オミオが指さした先には、遠く氷に覆われた巨大な板があった。

 遠目には、ただの岩の突端と見分けがつかない。

 園香は安堵の息をついた。

 もうすぐ帰れる。

 そして——

 そのとき。

 彼らの下を、影が駆け抜けた。

 雲の海から背びれが飛び出し、鋭く波を切る。

 氷の棘が夕陽の光を浴び、まるで刃物のように輝いた。

 園香は息を呑んだ。

 ——氷竜は無事だった。

 そして、彼らを追ってきた。

 大気が震える。

 力強い翼の一振りごとに、空間が揺らぐ。

「……そんな、どうして……?」喉が締めつけられ、声が掠れた。

「体の大きさを考えれば、二発程度じゃ倒れないってことだろうな。」 オミオはそう推測すると、すぐさま武器に手を伸ばした。「今度こそ、決めるぞ。しっかり掴まれ!」

 狩猟竜は急降下し、何度も軸を中心に回転しながら、雲の層を突き破った。下から氷竜へと接近する。

 オミオはその胸元を狙った。

 だが、その瞬間——

 氷竜の尾が勢いよく振り抜かれ、彼らの右側面を叩きつけた。

 凄まじい衝撃が二人を空へと弾き飛ばし、彼らの身体は何キロも宙を舞った。

 園香の視界が回る。

 空の青、紫、ピンクが溶け合い、終わりのない螺旋を描きながら、彼女を重力のない世界へ引きずり込んでいく。

 オミオは、なんとか狩猟竜を立て直そうと必死だった。

 地表へ墜落する前に、手綱を操りながら電撃を何度も与える。

 ——そして、最後の一瞬。

 狩猟竜はついに飛行の軌道を取り戻した。

 しかし、それでも遅すぎた。

 すでに地表はすぐそこに迫っていた。

 ——彼らは雪へと激突した。

 衝突の瞬間、園香はぎゅっと目を閉じた。

 鞍から弾き飛ばされ、何度も何度も転がる。

 そして、やがて丘の手前でようやく止まった。

 重力が容赦なく彼女の体を痛めつけ、あちこちが痣になった。

 だが、骨は無事だった。

 ゆっくりと目を開けると——オミオがすぐ近くに倒れていた。

 その脚が、異様な角度にねじれている。

「オミオ!!」彼女は絶望の叫びを上げ、必死に彼の元へと駆け寄った。

 しかし、彼は反応しない。

「オミオ!!」園香は叫び続ける。「……お前はパブロンなんでしょ!? こんなところで死んじゃダメ!!」

 微かに彼の体が震えた。苦しげな声を漏らす。

 園香の目から涙があふれた。「オミオ……私たち、みんなで一緒に星空の下で眠るはずだったのに……!」


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