第16話 (1/4)
オミオは園香の手首を掴み、次の瞬間、二人は駆け出した。
「しっかり掴まれ!」白い斜面のふもとで彼は叫び、両手にサンダーガンを構え、崖の縁に向けて撃った。
鉤が氷に深く突き刺さる。
園香は両腕を彼の首に回し、しがみついた。
オミオは勢いよく踏み込むと、一気に斜面を駆け上がり、引き込みを発動させ、二人の体を一気に引き上げた。
崖の上に到達すると、彼らは雪原を駆け抜け、狩猟竜のもとへと急いだ。
そして、すぐにその背に飛び乗り、空へと舞い上がった。
妖精たちは追ってこなかったが、彼らの耳を劈く叫び声は、数百メートルも離れなければ消えなかった。
「……あれ、何だったの?」耳の奥で響き続ける金属音のせいで、園香の声は震えていた。「普通なの?」
「いや、全然普通じゃない。」オミオが答えた。「妖精の声を聞いたのは初めてだ。あいつら、本来は音を出さないはずなんだ。」彼は肩越しに後ろを振り返る。「……運よく振り切れたけど、かなりの数がいたな。」
園香は、空に立ち込める雲を見上げた。
「つまり、スタージス家はモンスターを使って、自分たちの土地を守ってるってことね。」
「だから、猟師を雇う必要がないわけだ。」オミオは狩猟竜をさらに加速させた。「とにかく、一度帰って、エステファンとロッセレーヌに話そう。」
xxx
園香はオミオにぴったりと身を寄せ、頬を彼の背中に擦りつけた。
その瞬間、彼女の脳裏に焼き付いていたウェザロンの顔が蘇る。あの、結婚を申し込んだときの必死の表情——
一筋の涙が頬を伝い、バイザーの端に留まった。
突然、太陽が陰った。
影が彼らに張り付き、どれだけ速く飛んでも振り払うことができない。
園香は上を見上げた。
——そこにあったのは、巨大な氷竜の腹だった。
一瞬で、幼い頃の記憶が蘇る。
彼女はパニックになり、叫んだ。「オミオ!上よ!」
彼は反射的に頭を仰け反らせた。ほぼ無意識に、手が膝に固定されたピストルへと伸びる。そのとき——
低く響く声が、空を震わせた。「さて……ここにいるのは誰かな?」
二人は混乱しながら辺りを見回した。
だが、周囲には誰もいない。
いるのは——氷竜だけだった。
「……喋れるの?」園香が驚きながら言った。
「それが何か問題か?」氷竜は冷ややかに答えた。「人間なんて、結局みんな同じだろう。」
そう言うや否や、竜は急降下し、突っ込んできた。
オミオは即座に銃を構え、引き金を引いた——だが、弾は空を切った。
モンスターは予想以上に素早かった。
その巨体が狩猟竜ごと二人を弾き飛ばす。
彼らは制御を失い、地面へと向かって落下していく。
園香は必死に叫んだ。「話をさせて!お願い!」
氷竜は鋭く旋回すると、巨大な口を開けて咆哮した。「もう遅い!」
その喉奥が赤く光り、次の瞬間、燃え盛る炎の奔流が放たれた。
オミオは狩猟竜に軽い電撃を与え、素早く機動を変えさせた。
間一髪のところで、炎の直撃を免れた。
それでも、熱波が二人を包み込み、スーツの生地を通して熱が肌に染み込む。
一瞬、バイザーが曇った。
「怖がるな!」オミオが園香に叫ぶ。「お前はパブロンと一緒にいるんだからな!」
「んっ!」彼女はぎゅっと彼にしがみついた。
狩猟竜は急上昇しながらループを描き、一気に氷竜の頭上へと回り込んだ。
そこでオミオは電流を最大にし、両手のサンダーガンを発射。
鉤が竜の肩に食い込み、翼の付け根にしっかりと固定される。
電撃が炸裂し、氷竜の身体を痙攣させた。
次の瞬間——それは無防備に、深い闇の中へと墜ちていった。
「さっさと離れるぞ!」オミオは狩猟竜に勢いをつけ、加速させた。 「ここにまだどれだけいるか、わかったもんじゃない!」
園香は激しく高鳴る胸を押さえながら、墜ちていく氷竜を見送った。
「……お前も、聞こえたよね?」
「……ああ。」オミオの声が硬くなる。「ロッセレーヌとエステファンに報告することが、また一つ増えたな。」