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第14話 (7/9)

 

 園香はアーケードを抜け、スタージス博士の後を追って城へと入った。

 ホールに差し掛かったとき、ウェザロンが最後に不安げな視線を向けてきた。しかし彼は、母の指示に従い、踵を返して廊下へと消えていった。

 園香は深く息を吸い込んだ。

 視線を上げると、高いアーチ窓が目に入る。

 それらは、ピラスターの間に額縁のように収められ、まるで絵画のようだった。

 柱の一つ一つは交差するリブヴォールトへと繋がり、その浮き彫りには遠い昔の物語が刻まれていた。

 石に彫られたすべての場面には、花々が描かれている。

 その美しさが、まるで大理石そのものが語る神話を支配しているかのようだった。園香は、それらをよく知っていた。なぜなら、彼女が幼い頃から最も愛してやまなかったもの――それが本の世界だったからだ。

 ビエラは足早に廊下を進み、やがてある小部屋へと入った。

 彼女はほんの一分ほど姿を消し、すぐに荷造りされた革製のバッグを手に戻ってきた。

 そして、そのまま園香を導きながら、磨き上げられた黒光りする御影石の床を横切り、テラスを抜けて庭へと足を踏み出した。

 鋼鉄のワイヤードームの下には、まるで森のように広がる庭があった。

 ここは迷い込むには十分すぎるほど広かった。

 しかし、スタージス博士は迷うことなく道を知っていた。

 彼女の後に続きながら、園香は白樺の影に包まれた茂みを踏み進む。

 革靴の底が、下草を踏みしめるたびにぱきりと音を立てた。

 やがて、ビエラが低木の枝をかき分けると、その先に開けた空間が現れた。

 そこには、石で形作られた円形の祭壇が広がっていた。

「ここに座りなさい。」ビエラが中央を指し示した。

 園香は、その言葉に静かに従った。

 ビエラはメモリーストーンを三角形に並べ、乾燥させた花びらを金色の香炉に入れ、火を灯した。

 その鎖を手に巻きつけ、ペンデュラムを持って園香の周りを一周する。

 甘い薔薇の香りが、静かに彼女を包み込んだ。

 儀式を終えると、ビエラは鞄に手を入れ、三つのものを取り出して園香に差し出した。

 ――タンポポの種、カモミールの花、そしてエキナセアの根。

 ビエラは園香の指をそっと開き、それらを握らせると、低く言った。「食べて、祈りなさい。」

 園香は指示に従った。薬草を舌の上に乗せ、ゆっくりと噛み、飲み込む。

 食べ終えた瞬間、重い眠気が意識を覆っていった。

「もう帰って、眠りなさい。」ビエラが静かに告げる。「体を休めることが、今は何より大切よ。」


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