第14話 (6/9)
門のアーチには、シュタージス家の紋章――氷の薔薇が堂々と刻まれていた。
夜空のように深い青をした旅行ドラゴンがその前で停止し、御者が屋敷を昼夜問わず守る電流を一時的に解除した。
屋敷の上にそびえるドームは、訪問者すべてに正門を通らせる仕組みになっていた。
城の内部を見たければ、そこを通る以外の道はない。
鋼鉄のワイヤーで作られた球体が、城をまるで檻の中の怪物のように閉じ込めている。
塔は、岩の顎から飛び出す鋭利な竜の牙のようにそびえ立ち、その先端を弓なりに張られた電流フェンスへと突き立てようとしていた。
この場所で退屈することは決してなかった。園香は来るたびに、新たな発見をした。
今まで気づかなかった細かな装飾、模様、彫像、そして漆喰の一部――そうしたものが、屋敷のあちこちに隠れている。
ここにあるすべての石が物語を持っていた。それはまるで、「古き富」を綴った分厚い本の一章のようだった。
園香とウェザロンは、屋根のない馬車の後部座席に並んで座っていた。
その正面にはビエラがいた。彼女は圧倒されるほどの女性だった。
園香は、彼女の膨大な知識をいつも尊敬していた。
この世に、彼女が知らない花など存在しないように思えた。しかし――
今の園香の目に映る彼女は、今までとは違って見えた。
彼女とロッセレーヌが世間に隠している秘密とは、一体何なのか?
そのとき、ウェザロンが園香の震えに気づいた。
そっと、彼は彼女の手に自分の手を重ねる。
しかし、園香はすぐにそれを引き抜いた。
驚いた彼は視線を求めたが、彼女はただ一言、低く呟いた。
「今はダメ。」
――今は、感情について話すべき時じゃない。
ウェザロンはそれを悟り、気まずそうに目をそらした。
馬車が本館の門と敷地の正門を通り抜けた後、旅行ドラゴンが城の中庭に着地した。
周囲には、無数の花々が咲き誇っていた。
ドラゴンは左の翼を広げ、それがスロープとなる。
彼らは順番に、客室の区画から降りた。
「自分の部屋に行きなさい。」ビエラが息子に命じた。「明日また会えるわ。」
しかし、ウェザロンは動かなかった。「でも……」
園香は、この先に待ち受けるものが怖かった。
――そして、その恐れはウェザロンのシアンブルーの瞳にも映し出されていた。
だが、自分の不安を消すことはできなくても、彼のそれを和らげることはできるかもしれない。
「大丈夫。」園香は、勇敢に微笑んだ。「行きましょう、スタージス博士。」