第11話 (2/3)
その3年前
14,602年、
収穫期75日目。
「外の世界は何千年もの間、氷河期に覆われている。」テスロ軍曹は研修生たちに説明した。「地表で戦うためには、厳しい気象条件にもかかわらず、柔軟で器用である必要がある。常に動き続け、自分の体温を維持しなければならない。理解したか?」
「はい、軍曹!」
未来の猟師たちは、一糸乱れぬ声で答えた。彼らは厚手のジャケットに身を包み、何重もの布を重ね着していた。
まだ誰一人として、雪の結晶の紋章が刻まれた高価なオーダーメイドの防寒スーツを持っていない。彼らはまだ初年度の研修生であり、この時期は脱落率が最も高いのだ。
彼らは約30分、通路を飛び続け、火山「イニオ」周辺にある最大の地下氷洞、「クリスタルグロット」へと到着した。
温度計はマイナス40度を示していた。それは地表で太陽が出ている時の気温とほぼ同じだ。
洞窟の天井の亀裂から風と雪が吹き込み、地面や壁を鏡のように滑らかな氷の層で覆っていた。
グロットの入口からは、いくつかの遊歩道が野生地帯へと伸びていた。いくつかの道は他よりも魅力的に見えるものもあったが、それらはすべて異なる方向へと広がっていった。
「お前たちの任務は、できるだけ早くクリスタルグロットを通過し、基地を目指すことだ。」テスロは続けた。「最初に基地に到着したチームは10ランク昇格する。最後に到着したチームは10ランク降格だ。それを基準に、他のランクもすべて再計算される。チームは今朝すでに抽選された。ランク1から20の者たち、今すぐくじを開け、自分のチームメイトを確認して出発しろ。質問は受け付けない。基地で待っている。」
海野は興奮しながら、自分のくじを広げた。
10ランクの昇格は、彼をランク19からランク9へと引き上げることを意味していた。それは、家族全員を養うのに十分な給与を保証するランクだ。
彼の幼い弟妹たちに、より良い未来を与えることができるかもしれない。
海野は、優れたチームメイトに恵まれることを祈った。
しかし、くじに記された彼の仲間のランクを見た瞬間、海野の胸には不安が押し寄せた。
彼らとともに3人でチームを組むことになるのだ。
ランク60、フレーム・ゴスター。ランク61、ラヴァット・ゴールドマン。
最後の二人だ!泣きたくなった。せめて一人でも良いランクの仲間がいたら良かったのに、どうして二人とも完全なハズレなんだ?
「ゴールドマンさん?」海野は群衆に向かって呼びかけた。厚着をした研修生たちの中では、誰もが同じように見える。近くに立っていなければ、透明な防護マスク越しに顔を識別することは難しかった。
体格だけが、仲間を見分ける唯一の手がかりだった。
「ここだよ。」
ラヴァットは背が高く、細身だった。「俺だ。君の名前は?」
「俺は海野・オスコット、ランク19だ。」海野は言った。「俺たちはゴスターさんとチームなんだ。彼がどこにいるか知ってるか?」
ラヴァットは隣の男を指差した。
その男は比較的がっしりした体格で、海野と目の高さがほぼ同じだった。
「どうも。」フレームの声は単調で、まるで全てに無関心なように聞こえた。
その態度に、海野はさらに苛立ちを覚えた。
10ランクも降格するなんて、絶対に嫌だった。そんなことになるなら、最初から別の研修を受けた方がマシだった。
しかし、海野は二人への嫌悪感を隠そうと必死だった。口論すれば、ペースが落ちるだけだ。
だからこそ、海野はできるだけ広い笑顔で仲間たちに微笑みかけ、コンパスを取り出した。
彼らは歩き始め、しばらくの間、雪の中を一定のペースで進んだ。
ちらほらと雪の結晶が舞い降り、彼らの足元に広がる白い地面と溶け合っていった。
しかし、彼らの選んだルートを追うグループは誰もいなかった。
「本当にこの方向で合っているのか?」ラヴァットが疑問を投げかけた。
海野は頷いた。「どんなことがあっても行き止まりは避けないといけない。だから、難しい地形に突き当たる前に遠回りをする方がいい。」
「それはわかるけど、そんなことが起こるかどうかなんてどうやってわかるんだよ?計画なんて立てられないだろ。」ラヴァットは肩をすくめた。
海野は、雪の中から所々顔を出している棘のある木の枝を指さした。「あの茂みにはできるだけ近づかない方がいい。あれはスタチェルローズのツルだ。これが密集して生えている場所では、その近くに全体がツルで覆われた森が広がっている可能性が高い。それに、岩場も避けるべきだ。クライミング用の装備を持っていないからな。同じく、凍った湖や川にも近づかない方がいい。氷が割れるリスクが高い。」
「うん、うん!なるほど!」
海野はラヴァットが本当に理解しているのかどうか確信が持てなかったが、彼が言うことを聞いている限り、それはどうでもいいことだった。
そしてゴスターさんはというと、黙って彼らについてくるだけで、全てがどうでもよさそうだった。
数時間が過ぎるにつれて、分厚い服の下に少しずつ寒さが忍び寄ってきた。
海野は本で学んだことをすべて実践し、あらゆる障害を回避して進んでいたが、それでも基地はまだ見えてこなかった。
呼吸マスクの下では、冷気で唇の肌がひび割れてきていた。
彼らの持久力を過信していたのだろうか?
それとも、他のグループのように無謀に突き進んだ方が良かったのか?
だが海野は、最後尾のランクにいる仲間たちに、自分の判断ミスを認めるという恥を晒すつもりはなかった。
だから彼らは、引き続き岩場、棘のある蔓、氷の板を避けながら、グロットの中を歩き続けた。
気温は彼らの最大の敵となった。
防寒服を着ているにもかかわらず、寒さは海野のブーツに侵入してきた。
足の感覚がなくなり、歯がカチカチと鳴り始めた。
フレームとラヴァットも疲労で荒い息をついていたが、海野ほど寒がっている様子はなかった。
そのため、海野は気を引き締めた。チームの足手まといにはなりたくなかったのだ。
彼は先頭を歩き続け、さらに進み続けた。
やがて彼は力尽き、倒れ込んだ。
ぼんやりと意識の中で、仲間たちが自分の名前を呼び、何か話している声が聞こえた。
「くそっ、顔が真っ青だぞ!どうするんだ?」
「何かがおかしい。」フレームが言った。「防寒服はちゃんと寒さを防ぐはずだ。テントを張ろう。」
二人は海野のリュックからシートを取り出し、小さなテントを組み立てた。
テントが完成すると、フレームは電気ストーブのスイッチを入れ、ラヴァットは海野の服を脱がせ始めた。
「やべえな、これ。」ラヴァットは彼の足をむき出しにしながら悪態をついた。「靴下が間違ってる。」
フレームも海野の足の指に目をやると、自分のブーツを脱ぎ、加熱機能付きの靴下を取り出して海野の足に履かせた。
「で、お前はどうするんだよ?まさか海野の靴下を履く気か?」ラヴァットが皮肉っぽく言った。
「他に選択肢があるか?」フレームはそう返すと続けた。「予備なんて持ってないだろ、お前は?」
「まあ、たぶん予備のサーマルソックスはある。加熱機能はないけど、普通の布よりは少し厚いはずだ。」ラヴァットは自分のリュックを探りながら言った。
突如として海野は思い出した。加熱機能付きの靴下だ!
彼はそれを履くのを忘れていた!
代わりに、いつものように訓練用の薄い靴下を履いていたのだ。
自分の軽率さを思い出し、強烈な罪悪感が彼を襲った。
フレームやラヴァットよりも、自分の方がはるかに不器用だった。
今日という日、最下位にふさわしいのは自分だ――二人ではなく。
「す……すまない。」海野は苦しげに声を絞り出した。「今朝、履くべき靴下を間違えた俺の不注意で……それに、コースを甘く見ていた俺の判断ミスで……俺たちは負ける。」
「それはどうでもいい。」フレームが答えた。
驚いて海野が彼を見つめると、ラヴァットも同じように驚いた表情を浮かべていた。
「ああ、目が覚めたんだな!」ラヴァットが声を上げた。「気にするなよ。大事なのは、全員が無事、いや、少なくとも生きて基地にたどり着くことだ。はは!」そう言いながら、彼はフレームに自分の加熱機能付きの靴下を一足渡した。「苦労を分け合えば半分になるって言うだろ?」
残念ながら、探していたサーマルソックスは見つからなかったため、ラヴァットは片足に海野の古い靴下を履いた。
フレームももう片方の古い靴下を手に取り、感謝の表情を浮かべてラヴァットに目を向けた。
そして海野の方に視線を移しながら、こう言った。「調子はどうだ?まだ歩けそうか?」
海野はふと考え込んだ。
今日は自分の無能さを痛感する日だった。
もし二人の助けがなかったら、間違いなく両足を失っていたに違いない。
目に涙が浮かび、静かにこう言った。「ありがとう。」
しばらくの間を置いて、フレームとラヴァットはアイスグライダーを使って即席のソリを作り、海野を引っ張って運んだ。
彼らのチームは最後に基地に到着した。
到着した時点で、海野はランク29に落ちていた。
だが、思ったほど気にならなかった。
医療スタッフが彼を引き取り、凍傷の治療を施してくれたおかげで、両足を失うことはなかったのだ。
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一年後、あの出来事から時間が経ったある日。
海野はフレームとラヴァットと共に、洞窟湖での水泳訓練の後、湖の桟橋に腰掛けていた。
その時、彼は二人のある異変に気づいた。
「どうして……」湖に足を浸し、揺らしている二人の脚をじっと見つめながら、海野は問いかけた。問い終わらないうちに、答えが脳裏をよぎる。「どうして二人とも、片方の足の小指がないんだ?」
「それがな、はは……知ってるか?」ラヴァットは質問を無視するように首を後ろにのけぞらせながら言った。「あの時、俺たちが休憩しなかったら勝ってたんだぜ。モスと話してたら、あいつのチームは午後5時に基地に着いたってさ。俺たちがキャンプを張らなかったら、1時間も前にゴールしてたんだよ。俺たちは、ゴールのすぐ手前にいたんだからな。」