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第7話 (2/5)

 10年前

 

 14,595年、

 嵐のシーズン70日目。


 モスはマストに沿って帆の上を見つめていた。弟は隣で興奮して飛び跳ね、父親にいろいろな質問をした。少年にとって、本物の船を見るのも、船に乗って旅をするのも初めてのことだった。

「風がこれを動かしているんだよ」と父親が説明した。「気流がこの運河を通り抜けて帆を力強く押しているんだ。その気流は、上の冷たい空気と下の温かい空気がぶつかり合うことで、温度と気圧の差から生まれるんだ。」

 モスはそんなこと、とっくに知っていた。

 うんざりした様子で手すりの方へ歩き、肘を柵の上に乗せて水面を見つめた。

 チャプン、チャプン、チャプン、チャプン。

 船体は地下港を結ぶターコイズブルーの川の上で揺れていた。

 その波はフェニックス・サンのコピーの光を捉え、その模様をごつごつした洞窟の天井に反射させていた。

 天井には小さな石が落ちてくるのを防ぐための目の細かいネットが張られており、そこにいくつかの石が引っかかっていた。

 母親が隣に立った。

「どうしたの? 機嫌でも悪いの?」

「別に」とモスは答えた。「ここに来るの、もう十回目だし。」

 母親は優しく彼の肩甲骨を撫でた。「もうすぐ食事だよ。」そう言うと彼女は弟の方に向かい、弟は目を輝かせながら救命浮き輪をじっと見つめていた。

 ~ふん!~満腹になったところで、この退屈な旅が楽しくなるわけがない。モスはそう確信していた。

 船はオアシスの港に停泊した。

 二人は甲板を離れ、桟橋を渡って浜辺に行き、そこで靴を脱いだ。

 モスは足の指の間に細かく温かい砂を感じた。オアシスは街よりも地下深く、マグマに近かった。一方で、火山が足元に近いことに不安を感じた。その一方で、裸足で歩くのは気持ちがいいということも認めざるを得なかった。

 二人は、家族連れが川で水しぶきをあげている別の水浴場を通り過ぎた。にぎやかなおしゃべりは、時折子供たちの笑い声で遮られた。

 爽やかな風が、広々とした洞窟内にチューリップの香りを漂わせた。

 岩壁の換気装置から風が流れ、オムニ社の凧がシャフトから出てくる格納庫の近くでは、見学者が大挙して降りてきた。

 彼らは皆、美しいチューリップ畑を見たり、川で泳いだり、港巡りを楽しんだりしたかったのだ。都会の喧騒から逃れ、自然を楽しみ、家族と過ごすために。

 草原で、母親は弟と一緒に木の下にピクニック用の毛布を広げた。モスの父親が食事を出した。

 ユニコーンのステーキパンとペッパーリリーがあった。

 母親はいつも、モスが特に好きなダークソースを作ってくれた。

 いつもと変わらない休日だった。何度も出かけていた。モスは幸せだったが、まだそれに気づいていなかった。

 これまでは、毎日毎日経験するこの感覚を退屈だと思っていた。

 今までは。

 一斉に大地が揺れ始めた。

 地面がずれ、裂け始めた。

 二人がくつろいでいた木が倒れ、モスのすぐそばの地面に激突した。

 父親は即死だった。

 モスと弟がショックで固まっている間に、母親は素早く反応し、2人を草原から港のほうへ引きずっていった。

 人々は荒々しく叫び、その声は恐怖とパニックに満ちていた。水の中で窒息しそうな悲鳴もあった。

 モスは母親の後を追いながら、肩越しに振り返った。

 つい先ほどまで家族で食事をしていた場所から、巨大なドラゴンが地面を突き破って姿を現したのだ。

 その背びれの棘が草原を引き裂き、まるでそれが贈り物の包装紙であるかのようにずたずたにしていった。

 力強い爪で地中を掘り起こしながら、ドラゴンは体を泥の中から引き出し、長い首を伸ばして大きな口を開けた。その喉奥が赤く光り始め、やがて火を噴き出した。

 周囲のチューリップ畑は瞬く間に炎に包まれた。

 そのモンスターは、オアシスのすべてを次々と燃やし尽くし、灰にしていったのだ。

 母親はモスの腕を引っ張り、さらに早く走らせた。目を前に向けなければ命を落とす──その現実を彼に思い出させるように。

 走り続けるしかない。港へ向かって。そこでは、人々が船に押し寄せていた。

 灰白色の鱗に覆われた狩猟竜が、洞窟の通気シャフトを抜けて次々と飛び込んできた。その背には雪色の戦闘服をまとったモンスター猟師たちが乗っていた。彼らは獣を取り囲み、炎を避けながら近づこうとしたが、それはほとんど不可能だった。一人、また一人と火の息に飲み込まれて消えていった。

 港が目前に迫ったそのとき、ドラゴンが川に向かって火を吐いた。最後の希望だった救助船が、燃え上がり崩れ落ちた。

 モスの母親が必死に泣いているとき、新しくやってきたハンターたちに目が留まった。

「助けてください!子供たちを助けてください!お願いです!」

「お願いします、助けてください!」彼女は叫んだ。「どうかこの子たちを救ってください!お願いします!」

 その声は届いた。二人の猟師が立ち止まり、彼女と話し始めた。

 モスはその内容をすべて理解できなかった。沈みゆく船を見つめていたからだ。その白い帆は黒い塊に焼け落ち、視線を離すことができなかった。

 しかし、母親と猟師たちの間で交わされた言葉から、避難を手伝うことに同意してくれたことだけは理解できた。

「モス」母親が彼に話しかけた。「猟師の細身の狩猟竜に私たち全員を乗せるのは無理なの。だから、私はあなたの弟と一緒に飛び、あなたはこの親切な方と行ってちょうだい。」

 彼女は隣に立っている男性を指差した。

 その男はすでに手を差し伸べ、モスを鞍に引き上げようとしていた。

「分かった、母さん。」言葉が無意識に口から漏れた。

 二人は乗り込むと、空へと舞い上がった。

 彼らがシャフトに近づくと、巨大なドラゴンが再び火の玉を吐き出した——今度は真っ直ぐに彼らに向かって。ドラゴンの瞳は血のように赤く光っていた。

 彼らは、熱の壁を避けるため、できるだけ速く飛んだ。

 モスは、回り続ける世界に目がくらんだ——シャフトの壁が信じられない速さで通り過ぎ、ランタンの明かりが無限の渦となって溶け合うように見えた。

 ニューヨークシティに着いた時、後ろにはもう誰もいなかった。

「ごめん。」命を救ってくれた男がそう言った。


 xxx


 後になってモスは、地面から出てきたドラゴンがアイスドラゴンだと知った。誰かがそのドラゴンを小さな洞窟に捨て、密かに育てられていた。それが耐えきれずに地上に現れたのだ。あのモンスターは、最初から時間が経てば爆発するような存在だった。

 数多くの犠牲を払い、猟師たちはようやくその怪物を倒した。

 この事件は「バーニングマン・ディザスター」としてメディアに語り継がれることとなった。その日から、モスはどんな些細な時間でも無駄にしないよう大切にするようになった。そして、自分を守るためだけではなく、他人を守れるように強くなることを誓った。

 モンスターは野生で、危険で、邪悪だった。その認識が彼の感覚を鋭くし、彼を研修生のトップに押し上げた。


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