第47B話 (7/19)
3年後
14,581年
嵐の季の第79日
エコーは年を重ねるごとに、家の仕事を自分でこなせるようになっていった。
母親は掃除や片づけをすると機嫌が良くなるようだったので、彼は毎日、ルシンダの気分が少しでも良くなるように努めた。
最初は善意の行動だったが、やがてそれは習慣となり、年を追うごとにその範囲は広がっていった。
窓拭き、朝ごはんの準備、タイル磨き……
彼が母の負担を減らせば減らすほど、怒られることは減り、代わりに彼女の微かな笑顔を見ることができた。
ある日、親戚の家を訪ね、食後にいつも通り皿洗いをしていたとき、叔母のジャーメインが三つ子に言った。
「あなたたちも見習いなさい。いつも後片づけさせられてるけど、エコーはあんたたちより年下なのに、ちゃんと部屋をきれいにしてるのよ」
その日、三つ子たちは初めて食器を片付けるよう言いつけられた。
不満そうに舌打ちしながら、皿を持ってキッチンへ向かった三人の兄妹。
そこではすでに、エコーが最後のスプーンを丁寧に拭いていた。
一番大きいトーマスは、初めこそ警戒するようにエコーを見たが、すぐに表情を変えてニッと笑い、こう言った。「お母さんの言う通りだよ。俺たちよりぜんぜん上手い!これから皿洗い全部任せてもいいよな!」
「ほんとに?」
それはエコーがトーマスから初めてもらった褒め言葉だった。
頬がじんわり熱くなるのを感じた。
「ほんとほんと。すげーな、マジで」トーマスはエコーの肩をポンと叩いた。
ジェームズとダイアンも、それぞれ自分の皿をエコーの前に差し出しながら言った。
「エコーの手際、ほんとすごいわ!」とダイアン。
ジェームズは何も言わずに、ただ深くうなずいた。
親戚からの思いがけない賛辞に、エコーは嬉しそうに微笑みながら
次の皿に取りかかった。
その日を境に、エコーの周りには認められる機会が増えていった。
こんなにたくさん褒められたのは、生まれて初めてだった。
母親にとって彼の家事は「当然のこと」で、彼自身もそう思っていたが、三つ子たちは彼の「才能」に気づいてくれた。
駄菓子屋に一番早く行って帰ってこられるのはエコーだった。
かくれんぼでは誰にも見つからなかった。
小学校に入ってすぐに、二年生の宿題もこなせるようになった。
三つ子の目には、エコーは「特別な子」だった。
それは、彼をただ嬉しくさせただけでなく、いつかは叔父さんと同じ道を目指せるかもしれないという希望を与えてくれた。
「魔法使いになりたいのか?」ある晩、ホリスターおじさんが夕食の席でその夢を聞いた。「だったら、順番を待たなきゃな。俺にはもっと優秀な候補者がいるからな。」
彼は自信満々に笑う我が子たちを見つめた。
ダイアンはエコーの耳元でささやいた。「魔法使いになれるのは、最高の中の最高だけよ。アカデミーの枠は限られてるんだから、もし落ちても気にしないでね。」
ジェームズも反対側から小声で言った。「結局は、いい遺伝子が勝つから。
自分を責めるなよ。」
「でも、もし僕たちが魔法使いになったら、お前に仕事やらせてあげるから。俺たちの執事ってのも悪くないだろ?」そう言って、まるでそれがもう決まった未来かのようにふるまった。
それを聞いたエコーも、自分だけが魔法使いになれない運命なんだと受け入れるようになった。
その晩、彼は学んだ。
「特別であること」は、「非凡」であることと同じではない。