第54A話 (2/4)
街の境界を越え、彼らは通路を抜けて飛び続け、やがてクリスタル兵舎にたどり着いた。
ジモンは格納庫の前のベンチに腰掛けて、待っていた。
彼らの姿を目にすると、すぐに立ち上がる。
「怪我はない?」それが彼女の第一声だった。彼女の視線はモスの顔にしっかりと注がれていた。
「俺たちは無事だよ。」モスが答える。「ただ、防寒服も武器も全部奪われた。手ぶらさ。」
「分かった。ついてきて。」ジモンは階段を下りるように合図し、彼らをロタンダへ導いた。
二階層ほど降りたところで、彼らは倉庫を探して回った。
マイナス六十度の世界で凍え死なないよう、サーモパンツ、防塵マスク、マフラー、手袋――必要なものを手当たり次第に。
最後に自分のサイズのジャケットを見つけたとき、ディリーは小さく笑った。
それは、ギラギラとしたピンク色だった。
「サンダーガンだけは、そう簡単に手に入らないわよ。」ジモンが言った。「事情は知ってるでしょ。」
サンダーガンのような危険な武器は、必ず各猟師の名前で登録されており、正式な手続きを経なければ手に入らない。
例外があるとすれば、「フォールド」の姓を持つ者だけ――警察上層部の家系であり、武器の製造と供給も一手に担っていた。
そのとき、ギャラリーでランタンの明かりが灯った。
そろそろクリスタル兵舎を離れるべき時間だ。
ジモンは誰が来たのかを確認し、すぐに前へ出てその人物を会話に引き込んだ。
そして、巧みに別の部屋へと誘導してくれたおかげで、フレーム、モス、ディリーは誰にも見つからずに脱出することができた。
格納庫で鞍にまたがったとき、ジモンが後から現れる。
「出発して。」そう一言告げた。
フレームはその言葉に素直に従った。
兵舎からクリスタルグロットの入り口までは、さほど遠くない。
短い飛行を経て、彼らは冷たく小さな地獄へと足を踏み入れた。