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第53A話 (1/2)

 

 地面に膝をつき、意識を失わないよう必死に堪えていたフレームに、テロンが近づいてきた。

「心配するな。やつらはただ気を失っているだけだ。」

 ~癒えろ。癒えろ。癒えろ。~

 フレームは眠ってはいけなかった。

 意識を保ち、思考を保ち、力を取り戻さねばならなかった。

 彼は自身の生命力を高め、全身に新たなエネルギーを巡らせた。

 ようやく、体を起こすだけの力を取り戻す。

「アラナはどこだ?」

「それは、お前を牢にぶち込んだあとで調べる。」テロンはそう答え、ケーブルを巻き戻し、もう一度引き金を引いた。

 フレームは地面を転がってかわす。

 訓練で鍛えた反射神経が、今やかつてのような劣勢を補っていた。

 三年前とは違う。

 テロンは、自分の息子に“抵抗の技術”を教えてしまったという、決定的なミスを犯したのだ。

 だが、フックは完全に外れたわけではなかった。

 巻き戻された金属のケーブルが、フレームのふくらはぎに巻きついていた。

 電流はまだ流されていない。

 だが、この高速回転するケーブルは、速度と摩擦によって刃のように鋭くなる。

 今にも、脚が切断されそうだった。

 フレームは、体全体を硬化させることに集中した。

 九本の足指から、十本の指先まで。

 あの外で一度やったように、皮膚を強化する必要があった。

 彼は身をかがめ、両手で猛スピードのケーブルを掴んだ。

 強烈な摩擦が、手袋に穴を穿ち――

 現れた素手の掌は、まるで研磨されたダイヤモンドのようにガラス質に輝いていた。

 そのまま指を巻きつけるようにしてケーブルを握り込むと、動きが止まった。

 一気に引っ張り返すと――テロンのサンダーガンがすっぽ抜けて、床に落ち、フレームの元へ滑ってきた。

 これで勝負はイーブン。

 双方、残るは腰に一本ずつの銃のみ。

 テロンの目が見開かれる。「まさか……お前、妹まで巻き込んだのか?」

「違う。」フレームは答える。「いい加減、話を聞けよ。モンスターだって、ただの人間だ。病気が俺たちを殺すわけじゃない。母さんは妖精だったんだ……思い出せよ!」

「お前はもう正気じゃないな。」テロンは淡々とした口調で言う。

「だが大丈夫だ。良い施設に送ってやる。きっと助けてくれるさ。すべてはうまくいく。私の息子よ。」

 フレームは引き金を引くが、テロンは素早く回避した。

 そして残ったサンダーガンを真上に向けて放ち、

 フックを通気管に固定すると――

 そのまま片腕で体を引き上げ、勢いを利用してフレームに飛びかかってきた。

 フレームは反応が遅れた。

 テロンは彼の手首を背中にねじ上げ、膝で地面に押さえつけた。

 負けた――

 鍛え抜かれた戦士の“純粋な身体能力”に敗れたのだ。

 かつて「イエティを狩った男」として名を馳せた父に、自分はまだ到底及ばなかった。

 その屈辱に、フレームは歯を食いしばる。

 自分の弱さが、ただ悔しかった。

「これからお前と他の裏切り者どもを、グラハムのもとへ引き渡す。」

 テロンは低く呟いた。



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