第52A話 (2/2)
テロンが撃った。
フレームの腕を絡め取ろうとしたフックが迫る――
だが、それを横から弾き飛ばす別のフック。
ディリーだった。
彼女は自分の銃で、エンターフックの軌道を逸らしたのだ。
「どうしてなんだよ、お父さん……」フレームは、失望を隠すことができなかった。
そのとき、ティタニアの部隊が隔離ゲートの影から姿を現し、テロンを取り囲んだ。
テロンはフックを巻き戻しながら、低く唸るように言った。「それを聞きたいのは、こっちだ、息子よ。お前は一体、何を考えていたんだ?この国家で好き勝手に振る舞っていいとでも思ったのか?法律は理由があって存在する。お前には、それを破る資格などない。それなのに今や、お前は他人までそそのかして反乱に加担させている。お前には、心底失望した。」
フレームは、ぎくりと体を強張らせた。
まさか……エコーのことまで知られているのか?
だが、それはあり得ない。
その情報が届くには、彼らより先に知らせが届いていなければならない。
――そうだ。
父は、ネッスーノとキエロの拉致、そしてブラックウォーター・ユニコーン牧場での処刑から逃れた件について話しているのだ。
フレームの中に、怒りが吹き上がった。
――素直に死んでいればよかったとでも言うのか?
あの病気で死んでいった人たちのように?
エノリアがベッドで息絶える姿が、脳裏に浮かぶ。
――あのとき、彼女が死んだのは……お前のせいだ。
フレームの心拍が急上昇した。
「失望してるのは、こっちの方だよ!」彼は怒鳴り声を上げた。「お前は人殺しだ!人食いだ!母さんを殺して、夕飯として出した!スノーを殺したのもお前だ!他にも、何人殺したんだよ!?想像すらしたくない!お前なんか大っ嫌いだ!大っ嫌いだ!大っ嫌いだぁあ!」
その声は裏返り、何年も抑え込んできた怒りが、すべて吐き出された。
だがテロンは、一切表情を変えずに答える。「言い訳はやめろ。お前が何をしたか、私は知っている。こういう状況では、他人を責めるのは簡単だ。だが、自分の罪と向き合わない限り、お前は一歩も前には進めない。」
「聞けよ!!」フレームは叫び続けた。「母さんを食ったのはお前だ!……俺もだ!!全部お前のせいだろ!そしてスノー……」さっき飲み込んだ嗚咽が、今度は耐えきれずにこみ上げてくる。「スノーを……お前が、俺に……!」
「……これ以上、見逃すわけにはいかない。」テロンは再びサンダーガンを構えた。「お前は罰を受けなければならない。お前のせいで、アラナにまで被害が出たんだ。ここで、すべて終わらせる。」
「アラナがどうしたって……!?」フレームは思わず叫んだ。
テロンは二つの引き金を同時に引いた。「……彼女はもう、いない。」
だがその瞬間、テロンは銃口を上へと向け、
左右対称に、別々の方向へエンターフックを放った。
フックが空中で最高点に達したと同時に、
彼は体を捻り、回転しながら通電を開始。
あたかも“縄跳び”のように、電撃をまとった鋼の縄が円を描きながら襲いかかる――
触れた者は、全員その電撃の渦に飲み込まれた。
ティタニアも。
ディリーも。
フレームも。
その瞬間、フレームは初めて、父・テロンの名声の正体を痛烈に理解した。
――彼は、真にして、死の機械だった。