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第52A話 (1/2)

 

 アトラスはティタニアを間一髪で守り、モンスター猟師たちも、急降下で狩猟竜を操り、衝撃波をかわすことに成功した。

 99は飛行中のまま、フレームとディリーを受け止め、氷に覆われた大地へと静かに着地した。

 だが、爆発に巻き込まれなかった野生モンスターもいた。

 巻き込まれた者たちも、たしかに傷は負ったが、死には至っていなかった。

 今のところ、フレームが確実に仕留めたのは一体だけ――

 ディリーと99を食らおうとしていた、あの巨大な氷竜だった。

 いや、正確に言えば「食おうとした」のではない。

「殺そうとした」のだ。

 爆発した彼が復讐心から動いていたのは明らかだった。

 フレームは覚えている。

 かつてスノーが、竜の肉を嫌悪と共に吐き出したあの日を。

 ――ドラゴンが人間を飲み込むとき、そこには必ず理由がある。

 進んで人を食べることなど、ありえない。

 そう思っていても、フレームの良心は彼を責めていた。

 自分の手で命を奪ってしまったという事実が、心を締めつけていた。

 ――またしても。

「交渉は失敗したわね。」ティタニアが氷の地に降り立ち、冷静に言い放った。

 アトラスもそれに同意する。「彼らは、我々を決して許さない。もうこうなった以上……全員、倒すしかない。」

「いやだ。」フレームはきっぱりと言った。

 それは、彼の望んでいたことじゃなかった。

 ――彼は、友達になりたかっただけなのに。

 けれども、隣にいるディリーを見たとき、その震える身体が無事であることに、フレームは深く安堵した。

 ――今、大切なのは彼女の命。

 フレームは、すぐに気を引き締め直した。

 この状況では、感情に呑まれてはいけない。

 上空には、まだ無数の敵がひしめいている。

 そして、手元にはサンダーガンが一本しか残っていなかった。

 ――猟師が常に二丁の銃を携える理由、それが今だった。

「もう誰も殺さない。今は、この隙に撤退する。」

「でも……」ティタニアが異を唱えようとしたその瞬間、

 アトラスはすでに翼を広げ、フレームの命令に従う構えを取っていた。

 彼女はため息をついたが、反論はせず、その代わりに口笛を吹いて部隊を呼び戻した。

 その合図を受け、モンスター猟師たちは狩猟竜を旋回させ、そして――死と隣り合わせの逃走劇が、始まった。

 ニューシティに最初にたどり着いた者だけが、生き残れる。

 そして、遅れた者は――死ぬ。

 フレームはディリーの後ろに乗って、99にまたがった。

 そして二人は飛び立った。

 雪山が彼らの横を音速で通り過ぎ、白と黒と灰色が入り混じった雲の中を切り裂いていく。

 雲の切れ間からは、ところどころに青空がのぞいていた。

 この日は、暗くもあり、美しくもあった。

 どちらかには決めきれず、両方を併せ持つ空だった。

 野生のドラゴンたちは、フレームたちの背後にぴたりと張りついていた。

 速度を少しでも緩めれば、それが命取りとなる。

 ティタニアの部下の一人が飛行ルートを外しすぎて、群れの飛行軌道に戻ることができずにいた。

 その隙を突かれ、氷竜のブレスが彼を貫いた。

 ――叫びすら聞こえなかった。

 それほどまでに、彼の死は一瞬だった。

 フレームの中に嗚咽が込み上げ、涙があふれそうになった。

 だが、彼はそれを飲み込んだ。

 振り返ってはいけない。

 集中しろ。

 前へ――進み続けろ。

 前方には、エンギノと104が見えた。

 すでに隔離ゲートへと近づいている。

 もう少しで、たどり着く。

 そのとき、ティタニアがアトラスの背で鞍に立ち上がり、

 飛翔中の23へと跳躍した。

 狙いを外さず、見事に23の鞍に着地する。

 アトラスは騎手を失った瞬間、進路を変え、敵の群れへと突進していった。

 まさか、彼は――!

 だが、考える暇はない。

 フレームはディリーと99を連れて隔離ゲートを目指し、すでに到着していたエンギノが、カウントダウンを開始。

 彼の手がセンサーに触れると、外門の折りたたみパネルが開いた。

 一行はそのまま滑り込み、通過。

 外門が閉まり始めたころ、アトラスはまだ外に残っていた。

 彼は敵がゲートに近づかないように、炎の壁を築き上げた。

 自らもその中に取り残される形で。

 パネルが噛み合い、隔離室の入り口が封じられた。

 ハンターたちは息を切らせながら、

 内門が開くのを待ち、通過ゾーンで体勢を整えていた。

 ディリーも膝に手をつき、息をつきながら言った。「やったね、フレーム……!」

 ――フレームは、そうは思えなかった。

 嫌な予感が舌の上に乗っていた。

 それは、まるで胆汁のような苦味を帯びていた。

 内門のパネルが岩の壁に収納され、

 通路の先に続くシャフトが見える。

 そしてそこには――テロン・ゴスターが立っていた。

 その海のように深い青の瞳には、怒りの嵐が渦巻いていた。

 彼は腕を上げ――

 サンダーガンを、自らの息子に向けて構えた。


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