第50A話 (2/2)
フレームは落下していった。
生きろ。
生きろ。
生きろ。
彼の意識は、それだけに集中していた。
生き残るという一点に。
全身を焼き尽くすような激痛が、死という甘い救済を誘ってくる中――
フレームは、ただひたすらに「治癒すること」だけを自分に許した。
固い氷の地面に叩きつけられ、身体が粉々に砕ける感覚すら、
彼にとっては、まだ「生きるための過程」にすぎなかった。
ディリーのために。
モスのために。
そして、これまで出会ったすべての生者と死者のために。
今、死ぬわけにはいかなかった。
もっと強くあらねばならなかった。
もっと硬く、もっと耐え抜ける存在でなければならなかった。
フレームは、自分の体が何かに抗うように動いているのを感じた。
死を押し返す、必死の努力の結果、失われた四肢が少しずつ戻ってくるような感覚。
神経がビリビリとしびれ、
まるで無数の針が自分の身体を縫い合わせていくようだった。
やがて、彼は目を開けた。
そして見た――
氷竜の一体が口を大きく開けている。
その巨大な顎が、ディリーを狙っていた。
フレームは、地面に釘付けになったまま動けず、ただそれを見ているしかなかった。
――氷竜は、ディリーと99を、丸ごと飲み込んだ。