第1話 (1/5)
現在
14,602年、
暴風雨シーズン3日目
フレームは水深三メートルのプールの縁に立ち、足元から目線を外し、下にいるモンスターたちをじっと見つめていた。
人魚たちは水中に密集して横たわり、あちこちで尾びれが別の人魚に当たっていた。まるで催眠術にかかったかのように、何匹かが互いに押し合いへし合い、人魚の間を泳いでいた。行ったり来たり。逃げ場のないサイクルに閉じ込められた。
塩素の匂いが漂っていた。
水面からつま先の先がふくらはぎの長さほどしか離れていない。
ドンドンドン。プールの壁に頭をぶつける鈍い音が、工場内に響き渡った。
彼は、左側にいる標本が何度も壁に激突し、自らを傷つけているのを見ていた。
人魚の目はガラスのように輝き、虚ろで、その瞳孔はほとんど見分けられないほど細かった。彼女はもはや誰にとっても危険ではなかった。危険なのは、もう自分自身だけだった。
ここにいる怪物たちは、まるで魂を吸い取られたかのように、ぼんやりとしていて、当惑していて、意志が弱いように見えた。
とにかく、一匹を除いては。
彼の目は、明らかに自分を狙う黒髪の人魚に引き寄せられた。
濡れた長い髪が彼女の顔を部分的に隠し、片目だけが見えた。切れ長の瞳孔は深い赤色に輝いていた。彼女はプールの反対側に潜み、鼻先まで水に覆われていた。
恥ずかしくなって目をそらしたが、しばらくして彼女がまだ自分を見ているかどうかを確認した。
彼女はそうした。
彼は気分が悪かった。
人魚はまばたきもしなかった。
彼女は硬直したままだった。
フレームが彼女が本当に自分を意識していると確信するまで—無意識に水面に浮かんでいる他の人魚たちとは違って。
フレームが一歩下がろうとしたその時、擦れるような音がして、誰かが彼の肩に肘を置いた。
「かなりバカだね、あの生き物たちは」とゴドは言った。彼のふさふさした眉毛は、ヘッドバンドに触れるまで上がり、布の下に消えた。「でもね、授業よりはマシだよ。数学でAを取ったら、ドワーフ・ドラゴンをくれるってママが言ってた。それでやる気が出ると思う?もちろん、ドワーフ・ドラゴンは欲しいけど、それで頭が良くなるわけじゃない!わかった?ねえ、ねえ、フレーム?」
「そうだね。ドワーフ・ドラゴンなら最高だね。私も欲しいです」と答えながら、人魚を探して水面を探した。彼女はどこにもいなかった。
「男子部長がうらやましいな。最近、彼がそれを手に入れたらしいし、うちのクラスの女子も何人か持ってるんだ。」ゴドは鼻をすすりながら言った。「不公平だ!俺も欲しい!」
後ろにいた教師が手を叩いた。「みんな、こちらへ来てください!後ろに見えるベルトコンベアー、その仕組みについて、誰かわかりますか?」
ゴドは他の生徒たちと同じように先生の方を振り向いた。フレームも動き出した。足を上げて、一歩踏み出すために準備をした。
次の瞬間、彼の額が冷たいタイル張りの床に当たった。
水しぶきが飛んだ。何かが彼の足を引っ張った。水の壁が彼の頭上で砕け、彼は人魚たちの滑りやすい体に叩きつけられた。
彼が最後に見たものは、長い黒髪と尖った歯、そして赤く裂けた瞳孔だった。
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フレームは思い出した。デジャヴの繰り返しだった。
あのときも水に落ちた。水たまりに一歩足を踏み入れ、すぐに後悔した。
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その5カ月前
14,601年、
収穫期48日目
暗い洞窟の中でまっすぐ立っていただけなのに、突然、水が彼の頭を覆った。重力から身を守ることができなかった。
何が起こっているのかわからないうちに、彼は窒息した。濡れた服の重みで奈落の底に引きずり込まれた。細められた目を開けると、その目は燃えていた。
岩の天井が頭上に広がっていた。丸天井は彼を取り囲み、石造りのトンネルは頂上まで水で満たされていた。暗闇で視界が悪い。
穴?穴はどこにあった?
フレームは酸素が切れる前にそれを見つけなければならなかった。彼は必死に上へ向かって泳ぎ、出口を探ろうとしたが、どこに手を伸ばしても指の間に感じるのはただの抵抗だけだった。
〜あと少しだけ。あと少しだけ耐えればいい。〜
水が彼を肺から溢れさせ、意識を氾濫させた。澄みきった心が濁っていった。一瞬にして......まぶたが重くなった。死が怪物の姿で彼の内なる目の前に現れた。
二つの赤く裂けた瞳孔が彼を捕まえに来た。千本の黒髪が、網の目のように彼の頭に巻き付こうとした。
フレームは最後の力を振り絞って腕を動かした。手が水面を突き破って空中に伸びるまで、彼は岩の層にそって進んだ。