第49A話 (1/3)
突如、何の前触れもなくエンターフックがエンギノに向かって飛んできた。
スチールワイヤーが彼の腕に巻きつき、電流が流れる。
フレームは発射したフックのあとを追って跳躍した。
まずは馬車の屋根へ、そして御者台へ、さらに104の鞍の上へ。
エンギノが落下する直前に、フレームは彼を受け止めた。
彼はそっとエンギノを地面に横たえ、すぐさまモスの元へ駆け寄った。
モスが屋根の端から滑り落ちそうになる前に、間に合った。
フレームは脈を確認した。モスは生きていた。
フレームは謙虚な気持ちでエンギノを見つめた。
パブロンさんにも心があった。
彼は最大出力を使わずに、あえて手加減していたのだ。
とはいえ、それでも三人をまとめて長時間無力化するには十分すぎる電圧だった。
ただ一つの誤算――
フレームが、まさか……何?
彼がウェザロンのようだから?
エコーのようだから?
魔法使いだから?
フレームはその危うい考えをかき消すように、ぶんぶんと首を振った。
自分の治癒がどうやって起きたのか分からない以上、過信してはならない。
彼は意識を失った二人を馬車に運び、キエロ中尉のところへ横たえた。
幸いにも、エンギノは兄よりもだいぶ軽かった。
フレームは彼にも、キエロに投与したものと同じ麻酔薬を飲ませた。
これで今日一日は安静にしていてくれるだろう――そう思っていた。
だが、エンギノが咳き込み始め、目をぱっちりと開いたとき、フレームの予想は裏切られた。
警戒して身を引きつつ、どうやって気絶させるかを考えるフレーム。
しかしそのとき、パブロンさんは大きな茶色の瞳で瞬きをしながらこう言った。
「……きみ、だれ?」
「えっ……」フレームは唖然とした。本当にこれがエンギノなのか?
その表情はまるで別人のようだった。
無邪気で、率直で……とても人懐っこい。
「きみ……もう一人のエンギノなのか?」
「うん。」パブロンさんは小さく首をかしげた。「なんでそれ、知ってるの?」
フレームは眠っているモスを指差した。
ようやく事態を察したのか、エンギノは突然パニックになり、眠っている仲間を揺すり始めた。
「ダメだよ! モス! キエロ! なんで傷があるの? 何があったの? みんな、どうしたの?」
フレームはそっと彼をベンチに戻し、穏やかな声で言った。
「全部、僕が説明するよ。」