第43話 (3/3)
香取は廊下を歩きながら、次の患者に薬を届けようとしていた。
その時、叫び声が聞こえた。彼女は急いでその音のする方へ駆けつけた。叫び声は、先ほどの病室から聞こえたものだった。
香取がドアを開けると、ハリエットがベッドの上で身を起こして座っていた。
彼女は息を切らし、まるで悪夢から目覚めたばかりのように荒く呼吸していた。
「ここはどこ……?」第三国家魔法使いのハリエットは、怯えた目で香取を見つめながら尋ねた。
「ここは病院です。」香取は答えた。「あなた、どこにいたんですか、こんなに長い間……?」
誰かの足音が部屋に近づいてくる。
「私が生きてること、誰にも知られちゃだめ!」ハリエットは身を乗り出し、香取の両腕をつかんで揺さぶった。「絶対にダメ!聞いてる?」
「でも……どうして?」香取は混乱していた。ハリエットが戻ってきたことは、喜ばしいことのはずじゃないのか?
「お願い……! あいつら、私がまだ生きてると分かったら、また殺しに来る! お願い、私を匿って!」そして――ハリエットは大きく息を吸い込んだ。「――それから、ピーター・スタージスにどうしても伝えなきゃいけないことがあるの。でも、彼には絶対に私から聞いたって言わないで。少しのリスクも冒せないの。彼にも、私が死んだと思っていた方が安全なのよ。」
「誰があなたを殺そうとしてるの?どうしてそんなことを……?」香取の頭はぐるぐると回っていたが、答えは出てこなかった。「それで……何を伝えればいいの?」
ハリエットの鮮やかな緑の瞳に影が差した。「フォールド家よ。あの一族は――私たちの敵なの。」