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第43話 (1/3)

 

 一方で嬉しくもあり、他方で落ち込んでもいた。

 四半期後、夜勤のために病院へ向かった香取は、しおれた花のようにうなだれていた。

 ウェザロンが無事だったことは喜ばしいことだったが、その一件で試験を完全に寝過ごしてしまったのだ。

 普段なら目覚ましを聞き逃すようなことはなかった。

 しかし、寮に戻ったのは明け方近くで、そのまま深い眠りに落ちてしまったのだった。

 香取は、訓練生になってからというもの、自分の生活費を賄うために病院で働いていた。

 その中で、彼女は数々の病気やその治療法について学んできた。

 肉体に関する病において、ピーター・スタージス医師が手の施せないものは滅多にない。

 それが、香取が彼に憧れ、同じ道を目指している理由の一つだった。

 ただし、最大の例外があった。それが「病」だった。

 誰一人としてその進行を止めることはできず、

 最後には葬儀担当者が遺体を引き取り、火葬するだけだった。

 その後、清掃員たちが部屋をピカピカに磨き上げ、

 香取はまた新たな患者を「確実な死」の場へと案内するのだった。

 そんなある日、清掃を終えたばかりの病室に足を踏み入れた香取は、思わず目を見張った。

 そこには、見覚えのある苔緑色の髪の女性が、整えられたベッドに横たわっていたのだ。

 その人物こそ、長らく姿を消していた初代国家魔法使い、ハリエットだった。

 香取は困惑しながらベッドの足元に立ち、ハリエットの安らかな眠りをじっと見つめた。

 自分の記憶が正しければ、病院に入院していた国家魔法使いは、

 地上任務中に雷に打たれて昏睡状態となった第二国家魔法使い、ネッスーノのみだったはずだ。

 だがハリエット?

 香取は考え込んだ。

 ハリエットの入院が、後継者を前倒しで任命した理由だったのだろうか?

 しかし、なぜ香取は今の今まで、彼女が病院にいたことに気づかなかったのだろう?

 つい先週まで、この部屋には「病」に冒された患者が入っていたはずだ。

 好奇心に駆られ、香取はカルテを探ってみた。

 だが、看護師が通常、介護記録を挟んでおく場所には、何も挟まっていなかった。

 彼女は確認のため目で見たが、やはり何もなかった。

 香取は国家魔法使いの健康状態を確認した。

 ハリエットは規則正しく呼吸しており、外傷なども見られなかった。

 ただ眠っているだけだった。少し離れた部屋のネッスーノと同じように。

 彼女は、ハリエットにどう対応すべきか、医師の助言を仰ごうと決め、

 病室を出て廊下に出た瞬間、誰かとぶつかった。


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