第42話 (2/5)
一年後、香取は教師から渡された申込用紙を前にして、困惑しながらじっと見つめていた。
学校を卒業した後、どんな研修生課程に進みたいかを記入しなければならなかったが、何を書けばいいのか分からなかった。
次にピーターが孤児院を訪れた際、香取は彼を呼び止めて相談することにした。
彼女は空白の申込用紙を差し出した。
「つまり、どんな職業に就きたいか分からないんだね。」
「本当は、分かってるの。」香取は白状した。「どんな職業にも就きたくない。」
ピーターは驚いた表情を浮かべた。「どうして?」
彼女は目線を逸らした。「今のままがいいの。ここに住み続けて、みんなでずっと一緒に遊んでいたい。」
ピーターは微笑んだ。「つまり、まだ大人になりたくないんだね。香取、君はこの中で一番自立している子どもだと思うよ。もし誰かが次のステージを難なく乗り越えるとしたら、それは君だ。」
「でも、働きたくないの。」香取には、新しい研修生生活が自分のスケジュールにどう組み込めるか想像できなかった。今でさえ毎日やることが山ほどあった。加えて、新しい環境でどれほどの騒音にさらされるのか予測がつかず、また恥をかくのではないかという恐怖があった。
「働くことは本質的に大事なことだよ。我々が氷の時代を生き抜くには、皆で力を合わせるしかない。自分のことだけ考える者は孤独に死ぬ運命にあるが、一般の人々のために尽くす者は、共同体の支えを得ることができる。」ピーターはポケットから小さな包みを取り出した。「生き延びるためだけじゃない。人は『生きる』ために生きる。孤立は死への最短ルートだ。肉体的でなくとも、社会的な死が待っている。中には、心臓が止まるよりずっと前に死んでしまう人だっている。」彼はメガネ越しに香取の目をまっすぐ見つめながら、その包みを手渡した。「忘れないで、香取。心臓が動いている限り、生きるんだ。一秒でも早く死のうなんて、絶対に考えちゃいけない。」
香取は渋々リボンを引いた。「でも……利用されるのが怖くないの?」そう言いながら箱を開けた自分に、彼女はまるで寄生虫のように思えた。プレゼントを受け取る資格なんてないと思った。自分は何も与えず、受け取ってばかりの一般の一部でしかない。香取はまだ一度も、自分以外の誰かのために働いたことがなかった。だから、自分が生まれてきたこと自体が申し訳なく感じられた。これまで多くの人の努力の恩恵を受けてきたのに、自分は誰にも何も返していない。バラを植えたこともなければ、道を舗装したこともない。毎日使っている物すべてが、自分以外の無数の見知らぬ人々、そして死者を含む何世代にもわたる人々のおかげだった。それに対して、自分はまだ指一本動かしていないのだ。
ピーターは首を横に振り、優しく笑った。「民に尽くせば、民もまた君に尽くしてくれる。我々は互いに支え合う一つの存在。私が国家魔法使いとしての務めを果たしているのも、この火山に暮らす人々に長く生きてもらいたいからなんだ。」
香取は箱から耳当てを取り出した。その素材は柔らかく優しかった。ユニコーンの毛皮だ。
「どんな職業に就いても、きっと正解になるよ。君は才能ある子だ、香取。どんな研修でもきっと立派にこなせる。」
彼女は申込用紙を見つめながら、ぽつりとつぶやいた。「どんな研修でもこなせるの……?」