第41話 (4/5)
残念ながら、モスはその三十分後、街の兵舎で思い知らされた。世界中の知識を持っていたとしても、それを活かす機会がなければ何の役にも立たないのだと。
「もういない。」その言葉にははっきりとした落胆がにじんでいた。「クソッ!」モスはベッドの柱を蹴りつけた。
そこには片方の手錠だけが虚しくぶら下がっていた。
ロッカーの中身はすべて消えており、私物の痕跡は一切残されていなかった。
唯一残されたのはその手錠だけ。エンギノはいつの間にかこっそり引っ越していたのだった。
海野が唇に指を当てた。「静かに!さっさと出よう!」
「必要なときに限って、これだよ……」モスは舌打ち混じりに悪態をつきながら踵を返し、寝室を後にした。この時間、他の者はみんなベッドで寝ている――まあ、エンギノ以外は。
「たぶん家族のところに戻ってるんだと思う。」海野は向かいの寮からそびえ立つ城塞塔を見上げて言った。「もう訓練も終わったし、予想できたことだよ。」
モスはその分厚い城壁を見つめた。「あの城に侵入するのは無理だな。」
「うん。」海野は目を伏せた。「プランBに移行しよう。」
モスはため息をついた。「夜勤の看護師が、アサノさんとお前の芝居に引っかかってくれりゃいいがな。キエロまで逃したら、俺たちの負けだ。」




