第41話 (2/5)
10年前
14,595年
嵐の時代 第70日
父さんがあの子を家に連れてきたとき、ジモンはまったくいい印象を持たなかった。
臭くて、小さくて、泣き虫で、何の役にも立たなかった。
「ラヴァレ家のモスだ。」父さんは言った。「今日からうちで暮らす。」
ジモンは彼と部屋を共有させられる羽目になった。
貧乏だからではない。
代々続く猟師の家系である彼らには、そんなことはあり得なかった。
ただ、家の改修中という理由だった。
夜、あの子が自分のベッドに寝ているのを見たとき、ジモンは目を疑った。
だが、父さんに尋ねると、「フィールドベッドは君が使ってくれ」としか言われなかった。
これは相当うざい話の始まりに違いない。
ジモンはそう察した。
そして、数週間後、それが正しかったと知った。
父さんがあの子を甘やかしているのが気に食わなかった。
モスは皿洗いも料理の手伝いも一切せず、部屋の掃除もトイレ掃除もしなかった。
どれもジモンが小さい頃から当然のようにやらされてきたことだった。父さんはいつも、誠実で勤勉であれとジモンに教えてきたのに、モスにはそんなこと一言も言わなかった。
あの子はほとんど何も食べなかったため、食卓には毎日コショウユリが並んだ。唯一モスが口にする花だったからだ。
ジモンはそのスパイシーな花を見るのも嫌になっていたし、あの寄生虫にも我慢がならなかった。
いつもぼーっとした顔で空気に穴を開けるように宙を見て、世の中にまったく興味がなかった。
そろそろ現実を叩き込むときだった。
また無理やりコショウユリを飲み込んだある日、ジモンはモスの行く手をふさいだ。
「役立たずの重荷なんだよ、あんた!」彼女は怒鳴った。「その腐ったケツを動かして皿ぐらい洗いな!」
モスはピクリとも動かなかった。瞳孔は小さく、感情のない目をしていて、まるで頭の中が真空のようだった。
その様子を見ていた父さんは、ジモンを呼び寄せて言った。
「ジモン、お前が抑えてくれ。」
「なんで?私は本当のことを言っただけ。父さんだって、いつも正直でいろって言ってるじゃん。」
父さんはため息をついた。
「誰かを傷つけると分かっていて正直になるのは、正直になりたいんじゃなくて、その人を傷つけたいだけだ。あの子はつらい過去があったんだ。少しだけ時間をやってくれ。」
ジモンは鼻を鳴らして、ぶつぶつと文句を言った。
自分の言葉が優しくなかったことは認めざるを得なかったが、間違ったことは言っていなかった。
モスは自分の世話になっているくせに、何一つ貢献していなかった。それを見過ごすわけにはいかなかった。
どうやったらあの氷の洞窟から引きずり出せるか、ジモンは何度も考えたが、いい方法は思いつかなかった。
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入学式の日がやってきても、モスはまだ一言も喋らなかった。それがジモンの神経を逆撫でした。
「ねえ。」蛇行する坂道を一緒に歩きながら、ジモンが小声で言った。「あたしの方が速いに決まってるでしょ。」
モスは彼女を一瞬見たが、それ以上反応しなかった。
ジモンは唸った。「あんたが負けたら、今日は皿洗いね。言い訳はなしよ。」
待つことなく、彼女は坂を駆け下りていった。
男の子がその賭けに乗るとは思えず、走りながらも希望は薄れていった。あいつ、さっさと馬車にでも乗ってどっか行け、そう思いながら。
その時、足音が彼女を追い越していった。
目を見開くジモン。
モスがドラゴンの牙みたいな勢いで追い抜いていった。まさかの反応!
ジモンは急いだ。
ここで負けたら、本当に皿洗いをやらされる!
足をさらに速めた。
学校に着いた時、二人とも息を切らし、サウナにいる小型ドラゴンのようにハアハアしていた。
「このクソ頭!」とジモンは息を荒げながら叫んだ。負けてしまったのだ。
モスは誇らしげにニヤリと笑った。それは彼が初めて見せた笑顔だった。
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夕食後、敗北に打ちひしがれながらジモンが皿を流し台に運んでいると、モスが後ろからやってきた。
どうせ横でのんびり眺めるつもりなんでしょ?
~サディストめ。~
叫びつけたくなったその瞬間、彼はボウルを一つ手に取り、こう言った。「あたしの方が速く皿洗いできるって賭けようか。」
ジモンは鋭く息を吸った。すぐさま返した。「負けた方がトイレ掃除だからね!」
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それ以来、二人は毎日「どっちが上か」で喧嘩するようになった。
学校へ向かう道中で競争しない日はなかった。毎日が勝負だった。
誰がより早くバラを刻めるか、誰が早く床を拭けるか、暗算が得意なのはどっちか、誰が10分で一番多く洗濯物を畳めるか。
バッティアモ家の中は騒がしくなった。
競争となれば常に本気。
全力を尽くすことが求められた。
時には物が壊れることも。
モップ勝負の熱戦中、フェンブラッドの瓶がテーブルから弾き飛ばされ、真っ白だったイエティの毛皮カーペットは、二度と戻らぬ桃色に染まった。
そして氷のバラを刻んでいてモスが指を切ったその日から、新たなルールが追加された――「壊さず、怪我をしないこと」。
ジモンの父は、そんな二人を見てよく幸せそうに微笑んでいた。
そしてジモンはついに認めざるを得なかった――今ではモスが一緒に住んでいるのが、嬉しかった。
最後に父がこんなに楽しそうだったのは、母がまだ生きていた頃のことだった。
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ある夜、ジモンはすすり泣きの音で目を覚ました。
大きな音ではなかったが、不規則な響きが彼女の眠りを妨げた。
ジモンは身を起こし、裸足を木の床につけた。
その音はモスから聞こえていた。
ジモンは彼のベッドに近づき、ナイトテーブルのランプをつけた。「悪い夢でも見たの?」
少年は涙を隠そうともしなかった。恥じる様子もなく、悲しみに呑まれながら、ただひたすらすすり泣いた。
ジモンはしばらくその小さな滝を見つめたあと、部屋を出て台所へ走った。そして満杯のコップを手に戻り、それを彼に差し出した。「はい。干からびないように。」
モスは言葉に詰まった。呆然とした様子で水の入ったコップを見つめた。「干からびないように…?」と、ゆっくり繰り返した。
「そんなに泣いてたら、ジャーキーになっちゃうよ。だから飲んで!」
モスはコップの縁越しに彼女をちらりと見て、数口大きく飲んだあと、残りを一気に飲み干した。その後はもう泣く気にならず、すやすやと眠りについた。
その夜をきっかけに、ジモンはモスの泣き声で何度も目を覚ました。そのたびに台所へ走り、しおれかけた花に急いで水を届けるように、彼に水を持っていった。
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やがて、今度はジモンが涙を流す番がやってきた。
モスは彼女と父親と共に、亡き母親の墓を訪れた。
勇敢な猟師だった彼女は、戦いの中で命を落とした。
悲しみはあまりに深く、隠しきれなかった。
その夜、ジモンが枕に顔を埋めたとき、水を持ってきたのはモスだった。
家の改装が進み、ジモンは再び自分の部屋を持てるようになった。
もう夜中に彼の泣き声が聞こえなくなったため、彼女は就寝前に、彼のナイトテーブルに水の入ったコップを置くのが習慣となった。
彼もまた、彼女のために同じことをしたが、それは年に一度、彼女の母の命日の夜だけだった。
モンスター猟師の研修生申請書を書いていたとき、モスはジモンを懐疑的に見つめた。「本当にやるつもりなの? 君のお母さんは…。」と、そこで言葉を失った。
「お母さんは私たちを守った。彼女は優秀な猟師だったし、私もそうなるよ。」と、ジモンは答えた。
「でも…怖くないの?」と、モスの瞳孔が小さくなった。その姿は、かつて彼女が出会った、あの気弱な少年そのものだった。
でも今の彼女には、氷を溶かす方法が分かっていた。「一番怖いのは、負けることかな。」ジモンはにやりと笑った。「賭ける?私が学年で一番の猟師になるって。」