第40話 (2/2)
「パブロンさんが必要だ。」海野は地図に身を乗り出しながら、ルートを描いて言った。「エンギノかティタニアがいないと、出入りできない。できれば穏便に説得して、同行してもらえたら一番いいけど。」
「もしそれもダメだったら? ティタニアは他の家族と同じように、俺たちをバラバラに斬り刻むだろう。エンギノの方がまだ安全だ。」とモスが言った。
「でも…でもエンギノさんが自分から協力してくれるとは思えない。」海野が戸惑いながら返した。
「まあ、少なくともあの悪魔みたいな人格じゃなきゃな。」モスが言った。「軽く一発食らわせればいいんだよ。もう一つの人格はおとなしいからな。」
「もう一つの人格?」ディリーが眉をひそめた。
「エンギノは寝ぼけ歩きみたいなもんさ。」とモスは説明した。「毎晩、悪さしないように自分をベッドに鎖で縛りつけて、できるだけ早く目覚ましかけて、身体の支配を失わないようにしてる。目が覚めてスイッチが入ると、まるで別人になる。その状態なら従順にさせやすい。」
「お前が国家の敵ナンバーワンになるなんて誰も予想してなかっただろうし、一緒の部屋にされてたのも無理ないわね。」とジモンが茶化した。
「今じゃ全員、国家の敵さ。」海野が言った。「でも最初に敵意を示してきたのは、国家の方だった。」
皆の脳裏に同じ光景がよぎった。視線は焼き網の上、食べられなかった人魚の尾びれの残りに注がれた。