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第40話 (1/2)

 

 フレームは手の中のサンダーガンを見つめた。

 武器の内部に収められたメモリーストーンは外からは見えなかった。

 三重の絶縁材が全方向からそれを包み込み、不意の放電から使用者を守っていた。

「君の理論はつまり、外縁の洞窟にある三つのメモリーストーンを破壊すれば、言語の壁を打ち壊せるってことだね。」フレームがまとめた。

 海野は顎をかきながら言った。「正確にはちょっと違う。メモリーストーンを壊したら、爆発が起きる。だから僕たちは、全員吹き飛ばされる前に、安全にエネルギーを放出させた方がいい。」

 モスがわざとらしく咳払いした。「つまり国家魔法使いを説得して、地面にエネルギーを逃がさせるってことか。」

「うん。」海野の声には同意の響きがあったが、確信はなかった。

 この場にいる誰もが分かっていた。国家魔法使いと協力関係を築ける可能性はほぼゼロだと。なにせ、彼らはスタージス家の紋章、アイスローズの下で働いているのだから。

「選択肢なんてある?」ジモンが問うた。それは現状を的確に言い表していた。

「もし国家魔法使いたちを説得できないなら、殺すしかない。」モスが言った。

「メモリーストーンが補充されなければ、それで十分なんだ。」

「でも、それってつまり、次にその役職に就く魔法使いたちも、全部……殺さなきゃいけないってことじゃない?」ディリーが考え込んだ。

「ほぼ全員だな。」モスが歯ぎしりした。

 ディリーは指を折りながら、何人の死体が必要になるかを数え、最後に言った。「それって、めちゃくちゃたくさんのイケメンの死体じゃん。」

「戦いは避けられない。僕たちが何をしようとしているのか、向こうにバレた時点で、自由に動き回れるなんて思わない方がいい。リサレとその家族に起きたことを思い出せ。ピーター・スタージスが情けをかけるとは思えない。」モスは真剣な表情で皆を見渡した。「毎日施設で殺されていく命の責任を、僕たちは背負う覚悟を持たなければならない。そのためには、どんな犠牲を払ってでも自分たちを守らなければいけない。君たちは、魔法使いに武器を向ける覚悟があるか?」彼の視線はフレームを射抜いた。

 それは、答えたくない問いだった。

 フレームは鋭く息を吸い込んだ。

「僕たちは……説得できるはずだ。」

「それで、もし説得できなかったらどうするつもりだ?」モスは疑わしげに眉を上げた。「このまま、お互いを食い合っていくのを黙って見てるのか?」

 皆は陰鬱な顔をしてうつむいた。フレームは母のことを思い出し、自然と指を握りしめて拳を作った。

「もしモンスターが俺たちを襲ってきたら、お前は俺と一緒に戦うんだぞ、ゴスター。」モスが言った。「そいつがどんな身体にいようと関係ない。自分の言葉を忘れるな。」

 フレームの爪が掌に食い込んだ。

 ~誰かに何かを語るというのは、自分に呪いをかけるようなものだ。言葉は必ず自分に返ってくる。~

「とりあえず、まずは平和的にやってみない?」ディリーが提案した。「そのあとで決めることだってできるでしょ?」

「だが今のうちに、プランBについて合意しておいた方がいい。」モスは腕を組んだ。「決断の時は突然やってくるし、誰か一人の選択が、全員に影響を及ぼすこともある。だから最悪の事態に備えるべきだ。」

 海野は悲しげに皆の顔を見回した。そして視線をフレームに止めた。「僕は、君が選ぶ道を行くよ。」

 フレームは驚いて彼を見つめた。

 海野は続けた。「君はずっと、この恐ろしい秘密を誰にも言わず、一人で背負ってきた。それでいて、どれだけ危険な状況でもモンスターにも人にも助けの手を差し伸べてきた。君がいなければ、僕はもう歩けなかった。誰かが正しい選択をするなら、それは君だ、フレーム。もし決断の時が来たら、僕は君についていく。」

 フレームはじっと彼を見つめた。あまりの信頼に、言葉が見つからなかった。

「フレームのためなら、世界中のイケメンだって殺してやるわよ。」ディリーは甘い声で笑った。その笑顔は、ヴァヴァリーの砂糖菓子みたいな微笑みを思い出させた。「あたしも一緒に行くよ。」

 ジモンは首をぐるりと回しながら言った。「あたしも別にいいわよ。ゴスター、あんたの指示に従う。」

 アサノはしばらく口を閉ざしていたが、ここでようやく口を開いた。「私は戦闘には加われませんが、これは私自身の戦いでもあります。スタージス家は私の命を狙っているのですから。どんな決断になろうと、私は皆さんの傷を癒す手助けをします。」

 ゴドがフレームの鼻先を小突いた。「おい、俺たちは全員お前の味方だぜ。あの吹雪ヅラでさえな。」彼は目でモスを示した。

 モスは黙ってうなずいた。

 フレームは、この逃れようのない状況の中で、それでも仲間たちに向かって感謝の笑みを浮かべた。


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