第38話 (2/3)
次々と、解放されたユニコーンたちが工業施設の中庭へと流れ出してきた。
フレームはゴドに乗って先頭を駆けた。
助走をつけて、彼らは柵を飛び越えた。街路を駆け上がり、つづら折りの坂道を登っていく。
止まることなく、行く手を阻む障害物を次々と回避していった。
ゴドのスピードは目を見張るものがあった。
ユニコーンの脚力は、フレームの想像を遥かに超えていた。
まるで飛んでいるかのように、石畳の上を疾走する――いや、それよりも速かった。
フレームはこれまで、こんな速度を体験したことがなかった。
両脚をしっかり締めてゴドの首元に身を寄せ、ふわふわとした淡色のたてがみにしがみついていなければ、背中から振り落とされていたことだろう。
蹄の音が轟く中、彼らは段階を追って上層へと駆け上がっていき、やがてクレーターの壁に空いた穴へと辿り着いた――坑道の入り口だ。
坑道は彼らを水滴のように呑み込んだ。
フレームたちは新鮮な空気の流れに乗って、舗装された通路を軽やかに進む。周囲には照明の光。
響くのは、蹄のリズムが打ちつけるコンクリートの壁だけだった。
国境警備所では二人の警官が彼らを止めようとしたが、ここでもゴドは減速しなかった。
赤白に塗られた遮断バーを跳び越え、あっという間に追っ手を引き離した。
彼らは休まずにトンネルを突き進んだ。そして――ついに、遠くに見えてきた。クリスタル基地だ。
そこに、一頭の狩猟竜が飛来してきて、フレームの視界をさえぎった。その背に乗っていたのは、青緑の髪をなびかせた猟師。
海野が62に乗って迎えに来たのだ。フレームたちの前でスピードを落としながら、彼はビニール袋をフレームに放った。「行くぞ!」彼は後ろを指さして合図した。
フレームはビニール袋をキャッチした。それは空気を遮断するように密封された衣装パック――防護服の保管に使われるものだった。中にはスノーウェア、防毒マスク、手袋が入っていた。
「お前のドラゴン、ちょっと変わってるな」と海野が笑った。「俺たちのスピードについてこれるか?」
フレームがうなずくと、ゴドが耳元で叫んだ。「くだらねえドラゴンより、俺の方が倍速いに決まってんだろ!」
それに対して62がむっとした声で言い返した。「おい!いきなり個人攻撃かよ!」
狩猟竜は飛び立ち、ゴドはその後を猛スピードで追いかけた。
「生きていてくれて嬉しいよ!」風の中、海野が叫んだ。二人はトンネルを駆け抜けていた。「モスが全部話してくれたんだ。怒らないでやってくれよ!」
フレームは吹き出した。
あまりに大きな笑い声に、海野は不思議そうに彼を見て尋ねた。
「大丈夫?」
フレームはニヤリと笑いながら答えた。「モスがいつか俺を裏切るって、最初から分かってたよ。」
温度が急激に下がる手前で、彼らは一旦休憩を取った。
フレームは装備を着替えるために停まり、制服に着替え終えると、海野は大きな水筒と給水用の皿を渡してくれた。彼はそれを持って自分の狩猟竜の世話をし始めた。
フレームは皿をゴドの前に置き、水を注いだ。
「手紙、届いたよ。」静かに言った。「許さない。」
ゴドはたてがみを揺らした。「それでいい。」
「許す理由がないから。」フレームは水筒を閉めた。「お前は正しいことをした。感謝してる。」
「えっ?」ゴドのつぶらな目が驚きに見開かれた。
「やり方はひどかったけど、お前の言う通りだった。アラナは俺に新しい小型竜を用意しようとしてた。でも、それよりも、俺が感謝してるのは――スノーと出会えたことだよ。」フレームは胸に手を当てた。触れたのは、彼の制服に刺繍された雪の結晶(雪の結晶)の紋章だった。「こんな終わり方だったけど……俺は、スノーに出会えたことを後悔なんてしない。彼のことは、絶対に忘れない。」
「兄ちゃん……」ゴドの声は涙で滲んでいた。
安堵が涙の筆でフレームの顔に微笑みを描いた。「元気そうで良かった。どうやって生き延びた?誰かに治療の花をもらったのか?魔法をかけられたのか?」
ゴドは首を垂れた。「その答えは……きっと、お前は気に入らない。」