第37話 (2/2)
フレームはソノカが持ってきた食事に視線を移した。銀のトレイには、月花パン、チューリップサラダ、コショウユリがたっぷり載っていた。ブラックウォーター家は彼らを飢えさせるつもりはまったくないようだった。
アサノはその料理を見て、悲しげにため息をついた。「私たちはここで、ゆっくりと確実に死んでいくんだ。」
足音が近づく。看守が彼らの牢の前に現れ、鍵束を鳴らした。「そうでもないかもな。」
フレームはその声をすぐに認識した。顔を上げると、そこにはディリーの顔があった。
彼女はニッと笑い、キャップの下からはピンクのうなじ髪がのぞいていた。
「ちょっと見ない間に、イケメン仲間を増やしてるとはね!モスが聞いたらなんて言うかな〜?」
フレームは安堵の表情で微笑んだ。「君に会えて嬉しいよ。」
「シーッ!」ディリーは唇に指を当て、そっと牢を開けた。
彼らは音を立てないように、ディリーの後について回廊を進み、階段を下りていった。階を一つ、また一つと下り、ついに一階へとたどり着く。
フレームは檻の前で立ち止まった。
彼は網の向こうを見つめ、そこにいるユニコーンたちを観察した。
その毛並みは、黒、白、茶、まだらと、あらゆる自然の色に輝いていた。まるで鋼鉄の箱に詰められたプラリネのようだった。
アサノ博士の言ったことは正しかった。今ここで彼らを解放したら、幽霊の時と同じように暴走し、自分自身や他人を傷つけるだろう。実際、フレームは妖精の巣を訪れたときから薄々分かっていた。施設で生まれたモンスターたちは皆、トラウマを抱えている。アサノの言葉を借りれば「生きる力を失っている」のだ。悲鳴が耳を刺す。今ここで本当に立ち去ってもいいのか?
「早く来て!」と、ディリーが出口から小声で呼びかけ、手招きした。
フレームは檻の方へ戻った。
「なにしてるの?早く来なよ!」と、ディリーが少し大きな声で繰り返した。
フレームは彼女に返事をせず、モンスターたちに向かって叫んだ。「聞こえるか?」
案の定、ユニコーンたちは混乱したような声を上げただけだった。
フレームの存在には気づいていたが、彼の言葉は理解していなかった。
話せないのだ。あの水槽にいた人魚たちのように。あの妖精たちのように。そして、ニューシティで生まれたすべてのモンスターたちと同じように。
フレームは拳を握りしめ、檻に背を向けて一歩踏み出した。すると――
「おい、ブロか?」と、何百もの声の中の一つが叫んだ。