表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

154/218

第36話 (4/6)

 

 現在


 園香は銀のトレイを手にしていた。彼女の肌には火傷の痕ひとつなく、以前と変わらぬ滑らかさを保っていた。欠けているものはなかった。ただ、その目の輝きだけが失われていた。冷たく、空っぽで、感情のないまなざしだった。

「後悔はしていません」

 そう言って、彼女はトレイを配膳口に差し込んだ。

「人間はみんな美しいと思っていました」

 目を閉じて、続けた。

「でも、そんなことはどうでもいい。大事なのは、私たちが愛する人たち。――家族です」

 彼女は背を向けた。

「どういうことだよ……?」フレームが叫んだ。「人を救いたいって言ってたじゃないか!園香!」

 彼女は振り返らなかった。去っていき、看守がその後に続いた。

 彼女がいなくなると、フレームは失望のあまりベンチに崩れ落ちた。

「わからない……なぜこんなことを……なぜ彼女はまだ生きてる? ウェザロンも……」

 アサノもまた混乱しているようだった。「彼女の名前は、サリンじゃなかったのか?」

「彼女は園香ブラックウォーターだ」フレームは小さくつぶやいた。

「先生にも、僕にも、嘘をついたんだ」

 下の階からは、いまだにユニコーンたちの悲鳴が響いていた。耳を突くその叫びが、フレームの鼓膜を容赦なく打ち続ける。

「問題は、なぜ嘘をついたかだ……」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ