第35話 (5/6)
5年前
14,600年
暗時の20日
「私と結婚したいって?」
ルディは気まずそうに頬をかいた。「あまり嬉しそうじゃないね。」
シン・スタージスは目を回した。「ごめん、でもちょっと遅いよ。それって、うちの兄貴と園香の取り合いしてたんじゃなかったの?」
「正直に言うと、これは僕の意思じゃなかったんだ。」ルディは認めた。部屋の中を歩き、窓の外を眺めてから、シンが座って絵を描いている机へ向かった。
彼女は紙に幻想的な洞窟を描いていた。そこには何千本もの花が咲いていた。
「もっと大切に思える人に聞いてみたら?」シンは言って、筆を水に浸した。
「親がどうしてもって言うからさ、がっかりさせたくなかったんだ。」ルディはため息をついた。「たぶん、君の言う通りだ。バカな考えだったよ。」
「まったくだね。」とシン。「失礼だよ。なに?お金持ちってだけで、私が喜んで飛びつくとでも思ったの?」
ルディは困ったように笑った。「まあ、僕は… 君が僕のことを少しでも好きだったら、それで十分だと思っただけ。」
兄と同じく、彼女も父親譲りの血色のよい白い肌をしていた。シンの頬がほんのりピンクに染まる。
「な、なにそれ!」
「うん、僕は君が好き。でもそれ以上のことはできないと思う。それが僕の限界。」ルディは小さく微笑んだ。「それじゃ足りないなら、仕方ないけど。」
「今までで一番ひどい口説き文句だよ、それ。」
ルディは笑った。「絵の上に水をぶっかけるよりはマシでしょ?」
「その話やめて。」シンは頭を振った。「エンギノのこと思い出すだけで蕁麻疹出そう。」