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第35話 (1/6)

 

 現在


「喫煙者は一命を取りとめた。でも、もう元の体には戻れない。生涯、痛みに苦しむことになる。」

 ルディは椅子の上で前屈みになり、両肘を膝に乗せたまま、顔を伏せた。金髪の前髪が目にかかり、視線は読めなかった。

 リサレは彼の真正面に背筋を伸ばして座り、両手を膝の上に置いたまま、彼が数時間前に撃った人物のことを考えていた――彼の親友、ウェザロン・スタージス。

 ルディの椅子の横に、ぼんやりとした人影が現れた。白いスノースーツ、緑の髪、サファイアのような瞳。

 まるで、フレームが彼のすぐ後ろに立っているかのようだった。

「お願い、この道を進まないで……」と、彼は懇願する。

 ルディが上体を起こすと、その肘がその幻影に触れた。

 その瞬間、誰にも見えないその幻想が崩れ、フレームは砂のように散った。

 ルディはズボンのポケットから何かを取り出し、指先で眺めた。

 それは、小さな花だった。ボタンほどのサイズで、まるで植物というより石のような固さがあった。

「それ、何?」

「俺の厄除け。」

 リサレは一瞬体を強張らせた。

 気まずそうに視線をそらす。「……お守りじゃなくて?」

「これは持ち主にだけ不幸を運ぶ。周りには幸運をもたらす。」

 リサレはしばらく沈黙した。

 そしてぽつりと呟いた。

「……殺人者を殺した殺人者みたい。」

「明日出発する前に……」

 ルディは花をポケットに戻し、代わりにタバコを一本取り出して指に挟んだ。

「吸う?」

「いらない。」

 彼は火をつけて一口吸った。すると、その瞳はぼんやりと曇り、意識が遠のくようだった。

 数分そのままの状態が続いたかと思えば、突然ハッと目を見開き、現実に戻る。

 そして再び一口吸い、また別の世界に沈んでいった。

 その繰り返し。

 タバコが燃え尽きるまで、ルディは夢と現の間を行き来し続けた。

「なんでそんなことするの?」と彼女は尋ねた。

「みんな、同じ理由さ。」

「でも、意味ないじゃない。過去はもう終わったのに。」

 ルディは嘲るように笑った。「“未来”って、みんなが言うその未来が何だと思う? そのために生きる価値があるとでも?」

「ないわ。」復讐は未来を変えない――フレームの言葉が耳にこだました。

 彼女はその声を無視し、目を閉じた。「そもそも、生きること自体に価値なんてない。」

「それは正しい。」

 彼は次のタバコを取り出し、彼女に差し出した。

「本当に、いらないのか?」

「いらない。」リサレは腕を組んだ。「私は現在に留まる。そうでなければ、何もできないから。」

「結局、全部どうでもいいさ。」

 彼は次の一本に火をつけた。


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