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第34話 (12/12)

 

 勤務中にジャンキーを撃って以来、ルディは以前の彼ではなくなった。

 彼はもう感情を見せなかった――というより、自分に感情があるかどうかさえ分からなくなっていた。

 あの男から押収したタバコの箱を、今でもルディはポケットに入れて持ち歩いていた。

 ジャケットの内側からそれを取り出し、火をつけたら何かを感じるのだろうか、と考えた。

 彼は試してみることにした。

 煙が肺を満たし、タバコの精が彼の思考を支配し始める。

 そして――思い出がよみがえった。

 ルディの意識は時間を飛び越え、まだすべてが平和だった頃の場所へと転送された。

 あの時、彼らはブラックウォーターのユニコーン農園の別棟にある一室にいた。

 本当は宿題をしなければならない時間だった。

 ソノカ、オミオ、ウェザロン、そしてルディ。

 だが、彼らは代わりにトランプをしながら、キャラメリゼされた花冠を頬張っていた。

 ルディはそのとき、勝利の一歩手前にいた。

 彼は、友達と一緒に過ごすこと、そしてゲームをすることが大好きだった。

 ソノカがカードを配る。

 ウェザロンは自分の手札を見るなり、すでに汗をかいていた。

 彼の感情は頬の色にすぐ出るから分かりやすい。

 オミオは自分のカードを見ると、楽しそうに笑った。

 ソノカは最後に自分のカードを見せた。

 彼女の手札は読みづらかったが、ルディには分かった。

 なぜなら、彼は彼女のプレイスタイルを知っていたから。

 ソノカの欠点は――「せっかちさ」だった。

 ルディ自身は、配られた手札にこだわらないタイプだった。

 勝敗は運ではなく、プレイヤーの技量にかかっていると思っていたからだ。

 オミオが最初に勝利した。

 続いてソノカも勝った。

 そして二人は、試合の行方を固唾を飲んで見守った。

 場に出されたカードを見れば、ウェザロンの手札はある程度読めた。

 今ここでクイーンのペアを出せば、自分が勝てる――ルディはそう確信していた。

 だが、彼は別の組み合わせを選んだ。

 自分の勝利を悟ったウェザロンの目が輝いた。

 彼は椅子から飛び上がり、両手を突き上げた。

「ドゥラーク!」彼はルディを指差して叫んだ。

 ルディはただ笑った。「次は何をしようか?」

 その午後、ルディは何もかもがどうでもよかったあの無邪気な時間に、ずっと心を浸らせていた。

 世界が滲んで崩れ始めるまで、ずっと。

 そして――

 彼は現実の自分へと戻った。

 胸元には、制服に縫い付けられた家紋――フェニックスの紋章がある。

 ルディは時計に目をやった。

 もう時間だ。

 彼は寄宿舎を出て、射撃訓練場へと向かった。

 今回は、ルディが射撃訓練を行う様子を見た同僚が口笛を吹いた。

「どうした? めっちゃ上手くなってるじゃん。前は怖くて手も震えてただろ?」

 彼はターゲットを見た。

 すべての的が正確に撃ち抜かれていた。

 ルディは静かに言った。「俺が震えてたのは、的を外すのが怖かったからじゃない。……当てるのが怖かったんだ。」


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