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第34話 (11/12)

 

 訓練期間が終わった後、ルディは巡回任務に配属された。

 相棒にされたのは、かつて彼にタバコを勧めてきたあの同僚だった。

「時間潰しでもしようぜ」と、彼は一緒に一角獣に鞍をつけながら言った。

「でも、僕たちはこの地区を監視するように言われてるよ」

「お前は使い物にならねぇし、俺が全部やるつもりはないからな」

 それについては否定できなかった。

 もし襲われでもしたら、ルディには身を守る力がなかった。

 そんなことを考えただけで、ルディはまた震え出した。

 自分の無力さが情けなかった。

 もう嫌だった。

 誰かに守ってもらうばかりの「プリンセス」でいるのはたくさんだった。

 訓練で学んだことを果たしたい。

 自分の名前に恥じない存在になりたい――そう思った。

「だったら、君を待たずに僕が行くよ」

 そう言い残して、彼は騎乗モンスターにまたがり、一人で歩き出した。

 ルディは街をさまよい歩いた。

 自分が求めていないものを探して。

 しかし、職務放棄の淡い希望はすぐに打ち砕かれた。

 道の真ん中に、薬でラリった男が寝転んでいて、通行人の邪魔をしていたのだ。

 ルディは一角獣から降りて、男に近づいた。

「すみません、ここを通行の邪魔になっています。移動してください」

 だが、男は反応しなかった。

 天井のような火山の上部を見つめたまま、ピクリとも動かない。

 ルディは男の腕を取り、起こそうとした。

 男はまるで電気ショックを受けたかのようにビクッと反応した。

 そして、警察の制服に縫い付けられたフェニックスの紋章を見つめ、うわごとのように言った。

「……妻は、どこだ……?」

「わかりません。とにかく、通行の妨げになりますので、自宅に戻ってください」

「……妻を……」

 男はジャケットのポケットをごそごそと探り、タバコの箱を取り出した。

 一本取り出し、火をつけようとする。

「彼女がいないと……無理なんだ……」

 ルディは考えた。

 ここで見逃せば、男を追い払うことなどできない。

 すぐに手を伸ばし、薬物を押収した。

「……どうか、お帰りください」

 そのとき、男の顔色が変わった。

「何しやがる!」

 怒りに任せて男が立ち上がり、ルディに飛びかかってきた。

 終わった、と思った。

 ルディは一度も戦いに勝ったことがない。

 男の拳が彼の顔を、胸を、腹を打った。

 これは、彼が生きてきた悪夢の終焉なのかもしれない――

 ルディは、思わず笑みを浮かべてしまった。

「何がおかしいんだ、このクソ野郎!」男が怒鳴った。「なんで笑ってやがる!」さらに強く殴られる。

「もう、怖くないんだ」

 ひとすじの涙がルディの目尻を流れ落ちる中、口元の笑みはまるで凍りついたかのようにそのままだった。

「……死ぬのが楽しみなんだ。俺……」

 疲労で声が途切れ、体の震えも完全に止んだ――永遠に。

 これまでに感じたことのない静けさが、内側から彼を満たしていく。

 自然と、ルディの手が武器ベルトに伸び、レールガンを引き抜いた。

 そして――撃った。

 パンッ!

 弾丸は男の腹を貫通し、男は仰向けに崩れ落ちた。

 血がルディの顔に飛び散り、制服を汚した。

 その瞬間、彼は悟った。

 自分が運命を恐れていた理由も、そして何より、自分自身を恐れていた理由も――すべては正しかったのだと。

 ルディは、もう否定することができなかった。

 訓練生仲間が「負け犬」と嘲っていたような、自分に何もできない人間になりたかった。

 引き金を引けない無力な存在として、運命から逃げて死んでしまいたかった。

 でも、それはすべて嘘だった。

 今、目の前で血を流している男の姿が、その事実を突きつけていた。

 偽善は、もうたくさんだ。

 自分は――モンスターだ。

 祖母は、それを知っていた。


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