第34話 (7/12)
4ヶ月後
14,601年
闇の時代 第74日目
ルディは廊下から会議室のガラス窓越しに中を覗いた。まだ誰にも気づかれていなかったので、顧問の一人がこちらを見たとき、慌てて身をかがめた。誰かが出てくる気配はなかったが、代わりに紙の擦れる音が聞こえた。
「問題があります。このままでは、ニューシティはフェニックスの太陽から独立してしまいます。技術の進歩で、我々はすぐに追い越されるでしょう。」男性の声が聞こえた。
「今、革新的な手を打たなければ、フォールド家は長期的に繁栄を失うでしょう。」別の人物が言った。
誰にも見られていないと確信したルディは、そっと顔を上げた。ガラス越しに、祖母が老眼鏡をかけ、手元の書類を読み終えるのが見えた。彼女は面倒くさそうにため息をついた。
「問題しか持ってこないなんて。あなたたちを雇ったのは、問題を解決させるためよ!解決策を持ってきなさい!」
祖母の右隣に座っていた顧問が発言した。ルディには彼が誰だか分かっていた。いつも祖母と一緒にいるのを見かけていたからだ。黒髪をきっちり後ろに撫でつけ、姿勢はまっすぐ、肌は雪のように白い。制服には、胸元にフェニックスの太陽の紋章が刺繍されていた──警察の幹部、ジェフリーだった。
「もし誰かが我々の特権を奪おうとするなら、こちらも彼らの特権を奪い取るべきです。」
「具体的に話して。」レジーナが鼻息を荒くした。
ジェフリーは説明した。「魔法を奪い取るのです。」
「まあ、ジェフリー、あなたは簡単に言うけれど、そんなことできるの?成功の秘訣や手口を尋ねたところで無駄よ。貴重なものを持つ者が、素直に答えるとでも思ってるの?自分の良いアイデアを誰かにタダで渡す人間なんていないわ。スタージス家以外には、魔法の本質を理解している者はいないし、彼らはその秘密を死守している。」
「ならば、いっそのこと、誰の手にも渡らないように奪い去ればいいのです。」
レジーナは思案顔をした。「結局、そういうことね。」
別の顧問が提案した。「お孫さんのことは? まだ遅くはありません。政略結婚させるという手も。」
ジェフリーは手を振って否定した。「スタージス家は縁談を断ってきました。」
「奴らは我々の滅亡を望んでいる。」レジーナが鋭く言った。「でも、私たちは黙って見ているだけじゃない。ジェフリー、マイケルとその妻を連れてきなさい。」
指示を受け、ジェフリーは会議室を出た──そして、廊下でルディと鉢合わせた。
一瞬、二人の視線がぶつかった。
ルディは、自分の内側まですべて読まれているような気がした。
ジェフリーは微動だにせず、ただじっとルディを見つめた。そして突然、ドアノブに手をかけ、招くようにドアを開けた。
「もう十分大人だろう。入りなさい。」
ルディは戸惑いながらも、敷居をまたいだ。
「座りなさい。」
レジーナは笑った。その目には、ルディにはうまく読み取れない光が宿っていた。
ルディは指示に従って腰を下ろし、ジェフリーが両親を連れて戻ってくるのを待った。
全員が揃ったところで、レジーナが口を開いた。「ご存じの通り、フェニックスの太陽はまだ見つかっていないし、時間も迫っている。同時に、スタージス家は、我々が尻込みするのを恐れて、自前でフェニックスの太陽なしでもやっていけるように動き出した。このまま手をこまねいていれば、我々は全てを失う。街も、繁栄も、そして家族も。」その最後の言葉と共に、レジーナは鋭い視線を皆に向けた。
ルディは、両親の顔が青ざめるのを見逃さなかった。しかし、なぜ?
「時は来た……」レジーナは続けた。「それで──その子はどこ?」
ルディの母親は泣き始めた。
父親のマイケルは、苦しそうにワイシャツの襟元を引っ張った。
「分かりません。」
「分かっているでしょう……」ジェフリーは目を閉じた。
「……これが何を意味するか。」
そう言いながら、彼はポケットから何かを取り出してテーブルの上に置いた。
それは灰色の花冠だった。まるで石でできているかのように見えた。
ルディの母親の目にパニックが走った。涙でかすれた声で、ルディに向かって叫んだ。「ごめんなさい! あなたの妹がどこにいるか、私には分からないの!」
ルディの瞳孔が小さくなった。
──妹がいたなんて、知らなかった。