第33話 (15/15)
現在
「魔法かどうかなんて、正直どうでもいいのよ。」とレジーナが言った。
「あなたがその力を、正しい目的のために使ってくれるなら、それでいいの。」
リサレは迷うことなく答えた。「もし、スタージスを見かけたら、私は……」
「そういう意味じゃないわ。」大統領は両手首を膝の上で交差させた。「国家を傷つける殺人者は“テロリスト”と呼ばれる。でも、国家のために殺す者は“英雄”として讃えられる。私たちは後者よ。……そのためには、準備が必要だけどね。」レジーナの鋭い目がルディを捉えた。「この子は、あなたの役に立つと思う?」
「はい。」ようやく彼は口を開いた。
「よろしい。それならこの問題は片付いたわね。」
「何を手伝うの?」とリサレが尋ねた。
「あなたが役立たずの情報源だった以上、別の手段を講じるしかないわ。そして、魔法使いを倒せるのは――やはり、魔法使いよ。」レジーナは歯を見せて笑った。「それとも、国家魔法使いに手を出すのは気が引ける?」
両親の仇の記憶がリサレの脳裏に押し寄せた。
「いいえ、問題ないわ。」
「それは良かったわ。あとの説明はルディに任せるわね。ご協力、感謝するわ。」レジーナは手を差し出した。燃やされることなど、まるで恐れていないようだった。
リサレもその手を握った。
レジーナの指に光る宝石の指輪が、ひんやりと肌に跡を残した。
ルディはリサレを会議室から連れ出した。
ドアの敷居をまたぐとき、リサレの目がレジーナの補佐官に向いた。
その制服からして、彼は警察の幹部に違いなかった。
彼の胸には、フェニックスの太陽の紋章に加え、いくつもの勲章やバッジが飾られていた。
彼もまた、レジーナに負けぬほどの鋭い目で、リサレをじっと見返していた。
彼女は慌てて目をそらし、ルディのあとを追って廊下へ出た。
「今から君を部屋に案内する。」
フォールドさんは赤い絨毯が敷かれた廊下を進み、西の翼の一角にある金縁のドアの前で立ち止まった。
カチャリと金属音が鳴る。
ルディが鍵を差し込み、ドアを開けた。
中は支配者の寝室だった。
大きなベッド、両脇のナイトテーブル、天井まで届くベルベットのカーテン、イエティの毛皮で織られた絨毯、一面の壁に並ぶクローゼット、そして小さな応接セット――すべてが灰色一色でまとめられていた。
唯一の差し色は、黒く塗られた木材の家具だけだった。
リサレの目は、丸テーブルの上に置かれた煙草の箱に止まった。
「ここ、あなたの部屋でしょ。」
ルディは上着を脱ぎ、椅子にかけながら答えた。「今夜だけは、君のものだ。」
彼は煙草の箱を胸ポケットにしまった。「ゆっくり休んでくれ。明日の朝は早い。これから第三国家魔法使いを狙う。名前はハリエット・ヒルベリー、二十九歳。アカデミーで農業科学を教えている。国家魔法使いの中では一番の小物だ。君がいれば、無力化するのは簡単だろう。」彼の顔は、人形のように無表情で、糸に操られる操り人形そのものだった。「合図を出したら、君は――彼女を燃やせ。」
彼の目には一切の光がなかった。リサレは疑った。
その目の虚ろさは、煙草のせいだろうか? それとも、別の理由があるのだろうか?
彼の瞳の色は、壊れた氷のように鈍く濁り、泥の足跡で踏みにじられたように割れていた。
「スタージスに何をされたの……?」
彼の表情は変わらなかった。「俺だけじゃない。――やられたのは、俺たち全員だ。」