第33話 (14/15)
その後の数日間、リサレはホームレスのような生活を送った。
昼間はゴミ箱の中で寝る。毎回違う場所を選び、夜になると食べ物を盗むために街を徘徊した。
どの角にも敵が潜んでいるような気がして、一つの道を進む前に三度も周囲を確認するのが習慣になった。
――けれど、ほどなくして、そんな被害妄想じみた警戒心が正しかったのだと気づいた。
街を巡回する魔法使いたちの数が明らかに増えていたのだ。
通れる道はどんどん減っていき、うっかりすればすぐに誰かと鉢合わせになりそうだった。
彼女は理解する――自分が捜されているのだと。
この街にいる限り、彼女は永遠に追われる者だ。
それに、ここではもうじき飢え死にするだろう。
花を見つけるのも、日々困難になってきていた。
助けを求める相手も、もういない。
親切な人に頼れば、その人を不幸にしてしまう。
それ以外の人たちには――もう信頼できる者はいなかった。
「出て行きなさい」誰かがそうささやいた。
――いいや、誰かじゃない。亡き父の声だった。
まるでそこにいるかのように、リサレは彼の姿を見た。
やせ細った体、乱れた白髪、ハーフリムの眼鏡、そして自分と同じように紫に輝く瞳。
あまりにも本物のようで、リサレは思わず手を伸ばし、その幻をつかもうとした。
――そして、ようやく気づく。自分がどれほど追い詰められているかを。
「でも、お父さん……」喉の奥から、すすり泣きがこみ上げてきた。
父は存在しない――それがただの心の幻影でしかないと悟った瞬間だった。「私が何もしなかったら、誰も癒しの花のことを知らないままなんだよ!」
「お前には、何もできないよ。私の太陽。」
リサレは顔を両手で覆い、涙をせき止めようとした。
「隠れて生きなさい。お願いだ、生き延びてくれ。」父の幻影は、静かに霧のように消えていった。
リサレは考える。彼女のことをピーターが絶対に想像しない場所――
それはひとつしかない。
――黒い迷宮の中。
彼女は、360度の森へと戻る決意をした。