第31話 (3/3)
ウェザロンが廊下を急いでいたそのとき、突然、電気が落ちた。
一瞬にしてすべての明かりが消える。
「……なんだ?」
困惑しながらも彼は進み、次の通路で母・ビエラと出くわした。
「外へ出なさい!すぐに避難しなきゃ。幽霊が解放されたのよ。」 ビエラが警告した。
「幽霊……?」彼の目が見開かれる。「幽霊が解放されたって、どういうことだ? どの幽霊だよ?」
「言葉どおりの意味よ。地下に保管してたの。火災でサイロのひとつが損傷して、そこから逃げ出したの。警察にも消防にも、猟師にも連絡したわ。すぐに捕まえてくれるはずよ。だから、煙が広がる前に、早く来て!」彼女は急ぐように手招きした。
ウェザロンは動き出した。本当はショックで立ち尽くしていたかった。
「母さん……なんで私たち、地下に幽霊を保管してたの?」声がかすれていく。「もうすべて知ってると思ってた。でも、まだ隠し事があるなんて……なんで?」
「誇れることじゃないのよ。」
「教えてくれよ!何が起きてるんだ?!」
「あなたは考えたことないの? 私たちの財産が、何に基づいてるのか。どうやってアカデミーや学校、病院や孤児院、印刷所や風車なんかを維持してるのか。」
彼は言葉を詰まらせた。
ずっと、彼は自分たちが開拓者一族の末裔で、資金はその遺産から来ていると思っていた。園香も、ルディも、オミオも、そうだと思っていた。
「じゃあ、金はどこから……まさか……」彼の脳裏にひらめきが走った。
「タバコ……」
母は否定しなかった。
それが答えだった。
「俺たちが、ドラッグを製造してる……」
ウェザロンの世界は、またしても崩れ去った。
そしてまた、誰にも話せない。
誰にも――ただひとりを除いては。
燃えるような焦燥感とともに、彼が真っ先に思い出したのは――
「園香だ! 彼女を助けに行かないと! まだ図書館にいる!」
彼は踵を返し、煙が漂ってくる方向へと全速力で駆け戻った。