第31話 (2/3)
ウェザロンは彼女にその秘密を打ち明け、ずっと待ち望んでいたその書物を一人で読むようにと残していった。
実のところ、園香はその本を読まなくても、中身がわかっていた。表紙を見るだけで十分だった。
どれほどこの物語の中に自分を見失ってきたことだろうか。
内容を隅々まで覚えていたにもかかわらず、彼女は窓辺に座り、表紙をめくり、読み始めた。
ページをめくるごとに、目を背けていた現実が浮かび上がってくる。
――これは、ただのおとぎ話ではなかった。
両親は何ひとつ隠してなどいなかった。
最初からずっと、園香も、ウェザロンも、オミオも、ルディも、そのすべてを知らされていたのだ。
ただ、それに気づいていなかっただけ。
図書館のランプが明滅し――そして、ぱたりと消えた。
ショートだ。
今や、フェニックスの太陽の光だけが、窓から差し込んでいる。
その光は、園香に思い出させるためにあった。人類がどれほど電力に頼って生きているのかを。発電所がなければ、生き延びることもできないのだということを。
涙が彼女の頬を伝い、本の紙面を濡らした。
「ごめんなさい。」誰に向けた言葉なのか、自分でもわからないまま、園香はつぶやいた。「……ごめんなさい。」
もう自分が、何も申し訳なく思っていないことだけが、彼女にとって唯一の後悔だった。
彼女は大きく息を吸い込み――突然、激しく咳き込んだ。
「なに……?」彼女は顔を上げた。
煙が部屋の中に広がっていく。
パチッ、パチッ、パチッ――と何度も音がし、天井が燃え上がった。
すべてが一瞬の出来事だった。
火は本棚へと襲いかかり、本を食い尽くしていく。
飢えた魔物のように、炎は人類が何百年もかけて蓄えてきた知識を餌にしてむさぼっていた。
園香は立ち上がり、出口へと駆け出した。
彫刻されたセージの花があしらわれた両開きの扉にもう少しで届こうというところで、天井から梁が落ちてきて、道をふさいだ。
閉じ込められた。
炎が彼女を取り囲む。
近づいてくる。どんどん近づいてくる。
真実に辿り着くためにしてきたすべてが、無駄だった。
世界を変えるというすべての計画が、失敗に終わった。
炎が彼女の脚に触れ、園香の肌は焼け始めた。