第30話 (4/4)
フレームが階段を下りて居間に向かうと、園香と出くわした。彼女は朝食のテーブルにカトラリーを並べているところだった。
フレームは手伝い、皿を持ってきた。「ありがとう。」
「いいのよ。少なくとも、一人は病から救えたから。」唇に壊れたような笑みが浮かんだ。
アラナが焼きたてのポピーの花のお茶を運び、カップを二つトレイにのせて出した。「あなたたち、付き合ってどれくらいになるの?」
二人は同時に真っ赤になった。
「えっと、彼女はただの知り合いだよ。」フレームが訂正した。
「まあ!でもとても綺麗な知り合いさんね!」アラナは両手を背中に回して笑った。
「ありがとうございます、ゴスターさん。」園香は丁寧に頭を下げたが、フレームは羞恥と戦っていた。
アラナは台所カウンターの方へ戻っていった。声が届かない距離になった頃、園香が口を開いた。「あなたのお母さん、とても優しい方ね。」
「母じゃないよ。」
「え?」
「父が数年前に再婚したんだ。」
「なるほど。でも、彼女はあなたのことをとても大事に思っているみたい。」
フレームの口元が少しゆるんだ。視線はアラナに向けられていた。彼女は洗ったばかりのバラの花を刻んでいた。すぐそばには、ヴァヴァリーの古いティーポットが置かれていた。
その笑みはすぐに消えた。「どうする?あれが最後の一つだった。」
「表面に咲いているのをもう一度採るか、それともアサノ先生がどこへ行ったのかを突き止めるかね。」
フレームは首を傾げた。「まあ、後者の答えはたぶん『ストージス家が口封じした』だろうけど。」
「なんでそう思うの?」
「リサレの家族にも、同じようなことがあったんだ。」
「……そうだったの。」園香は、それについて全く知らなかったようだった。
フレームは、園香に打ち明ける決意をした。「君はここにいてもいいよ。アラナは君のこと、僕の彼女だと思ってる。」
彼は目線をそっと横に送った。アラナがこちらを気にして覗き見ていた。それに気づいて、フレームの頬はまた赤く染まった。彼はあわてて園香に向き直った。「君はまだ指名手配中なんだろ?名前を言わなければ、ここにいるのは安全だよ。」
「じゃあ、あなたは?」
「僕は表面へ行って、またあの花を採るつもり。そして計画通り、各診療所に分配する。」
園香は決意を込めて首を傾けた。「私も行く!」
「やめたほうがいい。パブロンたちにはすぐ見抜かれるよ。」
フレームの言葉に、園香は少し考え、そして納得した様子でうなずいた。「わかった。ここで待ってる。」
xxx
園香はゴスター家のもてなしに感謝していたが、フレームが出発した後、彼女もその家を後にした。
待つこと──それだけは、園香にできないことだった。